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Beerhouse3営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋はじめました

パスタ、スパイスとクラフトビール

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  どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか開業いたしました店主いけのです。

 

 あ、タイトルを見て、ビールとフードのペアリング、マリアージュの話だと思った方、すみません、今日は一切、そういう話は書きません。

 外来の食文化が広がっていく中で、どのように本来の多様性を再発見し、付け加えていくか、という話を。

 

 前職での仕事を通じて、街中で気軽に入れる飲食店が必要だと考えるに至った訳ですが、そのときは、あくまで自分がやる気はなく(やれるとも思っておらず)、市役所の業務として飲食店をプロデュースする、という仕事でした。

 

 当初は、中高年向け、ということで、和食を中心に動いていた中、もっと違うフックが必要だ、と方針を転換したときに、参考までに、と教えていただいたのが、東京・押上のスパイスカフェ、伊藤さんでした。

spicecafe.jp

 

 ちなみに教えてくれたのは、カリスマバイヤー、山田遊さんです。

openers.jp

 

 いくら、遊さん提案とは言え、「スパイス料理って何? カレー? カレーなの? 確かに三条には、カレーラーメンも、ひな鳥金子も、横綱揚げも、カレー豆もあるけれども」と半信半疑ながらも、他の東京出張用務のついでに、1回、食べに行ったのです。もちろん、仕事が終わってから食べに行くと終電が間に合わなわなそうなので、日帰りの旅行命令を無視して、自腹で1泊ですよ*1

 

 食べに行ってみて、確かにこれは行けるかもしれない、と思ったものの、食べながら考え始めたのは、これをどう他の職員に伝えて、会議を通し、そして市民の皆さんにも伝えていくか、ということです。

 

 ただ普通に言葉で聞いただけでは、「え、カレー?」と絶対に言われるに決まっているので。そして、食べてもらうのが早いとは言え、関係者全員を東京まで連れていく訳にもいかなければ、伊藤さんに三条までお越しいただくにしても、そのための調整がまずは必要であり。

 

 しかも、伊藤さんの提供するスパイス料理は、カレーと言えばカレーなのだけど、ボンカレーバーモントカレーに代表される、ジャパニーズ・カレーとは大きく異なるので、だからこそ、可能性があるのだけれども、「こんなのカレーじゃない」と批判される危険性もあり。

 

 で、食べながら説得する方向性として考えたのが、伊藤さんが目指しているのは、パスタなのかな、と。

 

 いけのが物心ついたころ、1980年頃には、世の中にパスタなんかなかったじゃないですか。スパゲティはあったけど。

 しかも、ミートソース(ボロネーゼソースでも、ラグー・アッラ・ボロネーゼでもなく!)か、ナポリタン。

 これは歴史的には、イタリアの食べ物ではなくて、イタリア系アメリカ移民を経由して、第2次大戦後に日本に持ち込まれたものらしいです*2

 

 それが、詳しくは分からないですが、おそらくバブルの好景気とグルメ文化なんかを背景に、イタリアから直接、多様なパスタ、「イタ飯」が日本に持ち込まれて、今では普通に一般家庭でも、カルボナーラもペペロンチーノも作るようになった。あるいは、明太子パスタ、醤油パスタのような、ジャパニーズ・パスタも創出されている。

 

 イタリア料理がここまで日本で受け入れられるようになったのは、単に時代性や流行だけでなく、使う食材や味付けが日本に合いやすかった(合わせやすかった)、という面と、後は、調理方法が比較的シンプルというあたりが背景なのでしょうか。

 

 翻ってカレーの歴史を考えると、インドから植民地のイギリスに渡り、肉料理のソースの1種として、手軽なカレー粉、カレールウが発明され、それが日本に来て、さらに、蕎麦屋のダシまで加わって、今のジャパニーズ・カレーが存在している訳です。

 で、パスタほどではないにせよ、ナンをはじめ小麦文化圏の、ヨーグルトを使うようなカレーは近年、ちょっと広まっているけれども、伊藤さんが目をつけているのは、北ではなく、南のコメ文化圏が中心で、米と豆と野菜と魚が中心なのだという。

 

 英米経由ではなく、本場から、日本人の口に合いそうな、より多様な料理を紹介する。

 

 後に、伊藤さんに三条で講演をしていただいた際、「昔、日本の家庭にオリーブオイルなんて、ありませんでしたよね? 今度はスパイスをそうしていきたい」というお話をされていて、「おー、ズレてなかった」と安心したものです。

 

 そして、ビールですよ。

 

 クラフトビールのムーヴメントの向かう先も、要するに、ペールラガー(≒ミートソース)だけじゃなくて、ジェノベーゼや、アラビアータや、ペスカトーレや、ボスカイオーラや、ボンゴレ・ロッソや、ボンゴレ・ビアンコや、ネロも、うまいよね、という世界なのかもしれません。

 あるいは、そのとき、ミートソースではなく、ボロネーゼ(≒ピルスナー)はやっぱり日本人は大好きだね、という話にもなるかもしれませんし、ボロネーゼではなく敢えてミートソース(≒ジャパニーズ・ライト・ラガー)、という話もあるのでしょうし、柚子胡椒や、山菜や、鰹節といった、日本オリジナルのスタイルのものも、本場に逆輸入されていったりするのかもしれません。

 いや、明太子パスタをイタリア人が食ってるかどうかは知りませんが。

 

 日本人の口に合う料理と言えば、伝統の中で培われた和食なのだ、和食に合うのは日本酒なのだ、というご意見については…まあ、長くなりそうなので、また、そのうち折を見て。

*1:翌朝始発で帰ったか、有給休暇を使ったかは記憶が定かではありません

*2:新潟の場合、幕末の開港5港に選ばれた結果、実は明治初期からイタリア直系のパスタが提供されていたりする訳ですけども