どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか開業いたしました店主いけのです。
演出家、劇作家の平田オリザさんの「演劇入門」という本を読みました。
と言っても、舞台演劇には相変わらず全然、興味がありません。
どのくらい興味がないかと言うと、一応、平田オリザさんという演劇関係の人物がいることは知っていましたが、この本の奥付を読むまで平田オリザさんは、もっとずっとおじいさんなんだとばかり思っていました。
実際には、62年生まれで、この本の初版98年では、まだ30代半ば。つまり、随分と若いときから活躍されていたんですね*1。
この本を読もうと思ったきっかけは、西澤明洋さんの「クリエイティブ」の使い方の中で編集者、佐渡島庸平さんが昔読んでウロ覚えと言いながらも言及していからです。
モノゴトの本質をより効果的に伝える上での演出、編集という技術について。
そもそも自分が舞台演劇に興味がないのは、どうにも物語を進めるための無理なセリフが多くて違和感があるからです。少ない情報量で物事を伝えるために演技も過剰だったりするし。
私たちの世代は、当たり前に映画やテレビドラマ、漫画といった視覚メディアに日常的に接しており、それに比べると、舞台演劇は場面転換の拘束が強くて、物語の進行を視覚ではなく、セリフに頼らざるを得ない。
しかも、文字表現だけの小説や詩歌と比べると、地の文がないため、言語表現としても伝えられることに制約がある。
とは言え、平田オリザさんは、まさにそういった時代の観客に向けて、そういった制約を理解した上で演劇の可能性を追求しておられるご様子。
この「自然な言葉だけを使って情報を伝え、観客の頭の中にイメージを作り出していく」、という技術については、どのような職業であれ、応用できるものではないかと思った次第。
たとえば、自社商品の魅力を消費者に伝え購買に結び付ける、その手前の顧客に伝え契約をまとめる、あるいは社内のスタッフ、プロジェクトチームのメンバーと事業の目的を共有するといったことなど。
もちろん、本書でも指摘がある通り、舞台演劇は多くの場合、見ようという意識を持った観客が外部と遮断された空間に集まって鑑賞をするものなので、頭の中にイメージをつくる作業はやりやすい、という面もあるとは思うのですが。
たとえば対極にあるのはテレビで、テレビは周辺のノイズも多く、他の作業をしたり、気が散ったりして画面から目をそらす人もいるので、視覚的なメディアにしては、意外と音に頼らざるをえなかったりするし、一方で、最近のバラエティ番組(と言っても、5年以上、まともにテレビを見ていませんが)で顕著なように、逆にその音声も聞き逃す人がいるので、テロップで補うような傾向すらあるわけです。
そういった意味では、まず注目を集め、集中してもらい、そこで深いメッセージを伝えていく、という段階に応じたアプローチが必要なのだろう、と先日、読んだベン・パー「アテンション」を思い返したところ。
*1:スポーツ選手とか学校の先生もそうですが、自分が小中学校のときから世の中に出ているオトナの人は、かなり年上に感じてしまいますよね