Beerhouse³ 営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋やってます

石川雅之「もやしもん 第8巻」読みました

 どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。

 

 タイトルのとおり、マンガ「もやしもん」の8巻、ついに読みましたー!

 

 いや、「もやしもん」って農業大学を舞台にして菌類(発酵学?)をテーマにしたマンガがあるってことは、たぶん、1回目のアニメ化くらいのタイミングで知って、その後、ドラマ化されたことも知っていたのですが、今まで、マンガもアニメもドラマも見る機会がなく。

morning.moae.jp

 

  で、クラフトビールを飲むようになってから、その「もやしもん」のエピソードの1つに、ビールをテーマにした回がある、という話も聞き及んでおりましたけど、なかなか、読む機会がなく。

 

 それが、こちらの第8巻。丸々1冊、ビールネタでした。

 

もやしもん(8) (イブニングKC)

もやしもん(8) (イブニングKC)

 

 

 まず、第1話(通算87話)に、プロローグ的にビールの概略を解説しておりまして、これもコンパクト、かつ必要最低限の内容を漏らさず網羅しており、参考になります。まとめ方として。

 

 で、88話以降が全170ページにわたる、今後の日本の地ビール・シーンがどうなっていくべきか、という興味深い内容。

 雑誌に連載されたのが、08年後半から09年初頭にかけて、ということで、ちょうど地ビールのブームがひと段落して、今につづくクラフトビール・ムーヴメントの黎明期、勃興前夜、という感じだったんでしょうか。

 作中、「クラフトビール」って単語は、「アメリカではそういう言い方もしているし、そう呼んだ方がいいのかもしれない」って程度で1コマだけ言及されており、その他は全体として、まだ*1「地ビール」という言葉で貫かれております*2

 

 ストーリーをがっつり要約すると、冒頭、1994年のビール免許緩和後の地ビール・ブームがなぜ終息したかへの批判的言及から始まって、それでも高品質なビールを造り続ける醸造所に対して飲む側はどう向き合うべきか、アタマでっかちな批判は必要なのか、ビールはもっと気軽に飲める酒であるべきではないのか、気楽に選べる多様性を広げる余地はないのか、では、具体的にどうするか、といった展開。

 

 個人的には、気楽に飲むべき、というところと、多様性・選択肢、という部分は大事にしていきたいポイントであるなー、と改めて思った次第。

 

 僕は選べる事こそが大事だと思うんだ

 

 加えて「本物」が常に素晴らしいとは言えないとも思っている

 それの最大の要因は「状況」だと思うんだ

 

 朝の忙しい時にかつおぶしを削るヒマはないし 

 市販の花かつおでも十分 ウマい

 何なら化学調味料でも安くて早く食事が作れる

 

 選択に幅がある

 

 というのは実に豊かだと思わないかい?

   (石川雅之もやしもん第8巻」(講談社)p.81)

 

 なお、純粋なマンガ作品として見た場合には、いきなり8巻から読んだので人物設定、人間関係の把握にやや戸惑うところもありましたが、8巻だけでも十分、読めました。

 少し批評的に言うなら、ストーリーマンガとしては、ちょっとテーマ性が前に出過ぎているかもしれないし*3、主人公が完全に置いてけぼりという進行*4、最後のオチがイベント開催*5ってのは盛り上がるは盛り上がるんだけど、ちょっと単純と言うか少し弱いのではないか、ってあたりが気になりました。

 

 ま、でも、そのうち他の巻も買って読むかもしれません。 

 

*1:おそらく意識的に敢えて

*2:藤原ヒロユキさんの04年出版の「知識ゼロからのビール入門」で既に「今までの地ビールとは違うクラフトビール」という提案はありますが

*3:8巻まで続いてくると、発酵にまつわる啓蒙的性格を背負ってるから仕方ない気もするけど

*4:1巻から読んでいる読者には緩急として許容範囲かもしれないけど

*5:冒頭から伏線張ってあるとは言え