どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。
と言う訳で、「新建築」という雑誌の存在くらいは知っていても、買うのは初めてだし、正直、読んでいても、読むポイントがイマイチよく分からない…。
巻頭、「公園からの都市再生」と題した木下斉さんへのインタビューがあり、以下、豊島区の南池袋公園、T-SITEの代官山、藤沢に続く第3弾の大阪・枚方があり、そして、当店から徒歩数分(というか通勤経路)の「ステージえんがわ」が掲載されております。
とりあえず、そこまで読みました。
「ステージえんがわ」につきましては、簡単にマトメるのが難しいので、またそのうち機会を改めて。
南池袋公園はコンセプトが「都市のリビング」、T-SITEは「街のリビング」、としているのが中々、興味深いと思いました。
いわゆるサードプレイス的なものをイメージしているのだと思いますが、リビング、という表現にやや違和感があり。公の場所にリビングがあったとして、そこに自分は出かけて行くだろうか? あるいは、リビングと言って指すもののイメージが、建築家の人たちは自分とは少し違うのか、あるいは地方生活者の自分にはイメージできないけれども、本当に開かれたリビングを目指した施設なのか。
サードプレイス―― コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」
- 作者: レイ・オルデンバーグ,マイク・モラスキー(解説),忠平美幸
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2013/10/26
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (9件) を見る
- 作者: ハワードシュルツ,ドリー・ジョーンズヤング,Howard Schultz,Dori Jones Yang,小幡照雄,大川修二
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 1998/04/23
- メディア: 単行本
- 購入: 12人 クリック: 187回
- この商品を含むブログ (57件) を見る
枚方は遠いので中々、行く機会もないと思いますが、南池袋公園については、折を見てちょっと寄ってみたいところ。
コア店舗である飲食を手掛けているのは、この会社ですかね?
元々、池袋はじめ都内で数店、飲食業を営んでいる企業の模様。
南池袋公園のお店では、オリジナルビール1種類とベアード2種類を樽でつないでいるらしいです*2。けど、8時から朝食やってて、ビールは11時のランチからとか言う、ぐむむ…。どうせなら飲める時間で行きたい…。
さて、順番が逆になりますが最後に、冒頭の木下さんへのインタビューで気になった点を。
(略)何もかもが外注となり、「手続き」が自治体職員の仕事になってしまいました。
僕はもう一度初心に返って、各自治体がいかに能力のある人材を雇えるかという、人材確保の価値観の転換をするべきではないかと思います。優秀な人材のいる自治体が設計し、地元の人間を巻き込んで実現する公園は魅力が上がり、先にお話したように固定資産税などで回収できる。さらに、その人の回りにさまざまな人材ネットワークといったソーシャルキャピタルが結成されていきます。そうすれば、次にまちで何か新しい動きをしようとした時にすごくよいものができます。これは予算をかけたかどうかでは図れない部分なのです。そのためには人事の仕組みや職員の評価基準を変えていくなど、よい公園、ひいてはよいまちをつくるためのインセンティブ設計も必要です。
新建築という雑誌でテーマが公園なので、あくまで、都市計画・土木・建設・建築部門に関わる職員だけを想定しているのかもしれません。
それであれば、元々が、技術系の専門職として採用されている人達なのだろうし、確かに、単に設計を外注するための予算積算をしたり、積算基礎となる主要諸元を決めたり、法規の照合をするだけでなく、今、社会にどのような課題があり、それを解決するために住民のニーズ、ウォンツをすくいとって、どのような使い方をしてもらう場所なのかを、きちんとイメージし、ヴィジョンを示せる人材に育てていく必要はあるかもしれません。
ただ、それこそ自治体の組織論にもなりますが、外注せず、役所内で完結させる場合でも、(狭義の)設計以外の仕事の多くは、建設系部門の担当ではなく、たとえば、社会の課題特定であれば企画系部門であったり、実際に市民に使ってもらうシーンでは生涯学習をはじめとする市民寄りの部門に仕事が振られそうな気もします。
それでは技術系専門職ではなく、一般職の中で、構想から実装までのディレクションを一気通貫で手掛けるヴィジョナリスト、コンセプターとして、自治体は専門人材を確保、育成すべきなのか?
多分、市役所に入ったとき、中にいたときは、自分はそういう仕事をしようと思っていた気もするんですが、自分は辞めちゃったし、ちょっと難しいのでは、と思います。
どんな組織や事業体であれ、核となる業務を遂行する能力は外注せず、自前で確保した方が意思決定のスピードや正確性、実力の積み上げ、その他、どういう観点から考えても、よいとは思います。
そして、このあいだ書いた話とも関連しますが、地方自治体は、中央からの交付金・補助金により、その都市の実質的な経済水準よりも高い給料を職員に支払うことができ*3、社会的なやりがいとかの要因もあって、基本的に優秀な人材を確保できる立場にはあると思うんですよね。
問題は、その若いころは優秀だった人材を、地方自治体が組織内できちんと評価し、育成していけるのか。
あるいは、優秀な専門人材を育成すべきなのか。
そうすべきか、と言うのは、地方自治体の場合、特定の人間を専門家にしようとすると、数が少ないために、癒着や利権の温床になる。あるいは、少数(場合によっては、たった一人)の担当者の価値観、イデオロギーに左右されて、本当に多様な視点からの政策提案がなされなくなる。
新しいコトを企画構想から実装まで一気にやり抜こうとしたら、多分、属人的な仕事の方が速いし、上手くいくのだけれど、地方自治体の仕事が属人的であってよいのか。
選択可能性、代替可能性を保持するためには、特定の一人の担当者に依存するのではなく、民間との出入りを含めて入れ替え可能な複数人を確保すべきで、それができないなら、自治体職員を専門人材として育てない方がよいのではないか。
そう思うと、現実的には、民間に外注せざるを得ないのではないか。
できれば、それが傭兵、落下傘部隊のように外(東京)からやってくるだけではなく、そこで暮らしを営む人間として、きちんと背景を踏まえて取り組める人たちであるべきだし、当該自治体内だけでは足りなくても、せめて近接する市町村で複数人を確保して、その都度、組み合わせを変えながら取り組めればよいのではないか、と思う次第。
本当の地方創生、地方自治は、別に自治体の官僚組織、職員のスキルアップがなくても、民間にできるヤツが育てばいい、と言うか、民間で育てるしかないのでは、と思うところ。
もちろん公共でないとできない仕事はあるので、理想的には、そうやって民間で実績やノウハウ、ネットワークをつくった人間は、時々、任期付きのポジションで役所には入れたりしたら、いいのかもしれませんが*4。
なお、雑誌後半の医療・福祉施設の特集とかも面白そうではあるので、時間を見て、そのうち読みたいと思います。