Beerhouse³ 営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋やってます

どうして仕事を休んでまでフェスに行くのか

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 どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。

 

 明日8月20日(土)は、千葉・幕張で開催されるSummer Sonic 2016(サマソニ)に参戦のため、お休みをいただきます。明後日21日(日)は戻ってきて営業予定ですので、よろしくお願いいたします。

www.summersonic.com

 

 で、8月の土曜に休んでて大丈夫なのか? という言い訳めいた話。

 

 まず、経営的に大丈夫なのか、と言われたら、短期的には全然、大丈夫じゃない。

 いや、もっとも、「8月に入ってビール・シーズン到来!」って感じを期待してたら、来店者数の増加状況はそれほどでもないので、土曜1日の売上を落とす部分の罪悪感というか、後ろめたさは、それほどでもない。

 食材やビールの鮮度維持って観点からは、うまく在庫調整をしていくしかない。

 

 それよりは、まだ出来て半年の店で、いつ開いていて、いつ閉まっているのかが安定しない、気軽にふらっと寄ってみたら閉まっていた、という状況の方が、よろしくない。

 もちろん、8月はサマソニ行くから休むよってことは、このブログでもfacebookでも、だいぶ前から告知してるし、このディジタル・メディア全盛期なのだから「ちゃんとチェックしてくださいよー!」とは思うけれども、そんなものは、経営サイドの甘えでしかない。

 前もって計画を立てて、場合によっては予約を入れていくような、「きちんとした店」であれば、まだしも、気軽にふらっと立ち寄れる店を目指す以上、よろしくはない。

 

 だけれども、長期的には、プラスになると思うから行くのです。

 というか、プラスにするしかないじゃん。

 どうやってプラスにするか、を考えるしかないじゃん。

 

 なぜ、フェスに行くのか。

 そこにフェスがあるからさ。

 

 すみません、すみません。言ってみたかっただけです。深い意味はありません。

 

 まず、第1にどんな事業体であれ、個人の生活を犠牲にして、その上に成り立つ仕事などない。

 好きなことがあるなら優先されるべきだし、優先できる仕組みをつくるべきである。

 前の職場で(まあ、公務員、公の「僕」という特殊性はあるけれども)、根性論で滅私奉公を強いる一部の幹部職員の発想は「中世ですか?」としか思わなかった。

 なので、将来、人を雇うことがあったときにも、彼/彼女のプライベートは仕事よりも(なるべく)優先されるべきだし、そのような仕組みをつくっていくためには、人を雇うようになる前から、プライベートを優先すべきだ、という姿勢を事業体として打ち出すべきである。

 ま、最終的には、軽重を秤にかけて比べることになるとは思うんですけどね。この間の、Omnium Gatherumの来日公演とか、パスしてますしね。

 

 第2に、当店の雰囲気づくりの上で、音楽は結構、重要な地位を占めていると考えて、毎週のBGM更新とかもしており、フェスに参加することで、新しい音楽との出会いであったり、それらの音楽を支持しているファン層(と当店の客層との重なり)を確認したり、という効果はあると思う。

 今年、行く予定の3つのフェスのうち、今回のサマソニが当店のBGM選曲には最もマッチしている、ポップ寄りの出演者でもあるし。

 

 とは言え、たぶん、当店にお越しいただいている大半のお客様にとって、当店のBGMは、ややウルサいけど、耳障りってほどでもない、よく知らない海外のバンド、という認識にとどまると思われ、現状、積極的なプラス材料には全然、なってないんですよねぇ。

 一応、遠慮して本丸のメタルは掛けずに、それなりに一般受けしそうなバンドを選んでいるんだけども。むしろ、ハードコアなファンが少ない分、「聞いてるよ」って人がいても、話題になりにくいんでしょうか。

 確かにメタルファンと偶然出くわしたときの「同志!」感は、めったに出会わないからこそ、ハンパないですからね。

 ということで念のため改めて書いておくと、当方の主食は、Omnium Gatherumとか、Insomniumとか、Amorphisとか、Sentencedとか、At The Gatesとか、The Hauntedとかスウェーデンおよびフィンランドあたりのバンドです。あと、その辺の影響を受けた、Killswitch EngageUnearth、Miss May Iとかのアメリカ勢。

 

 第3に、2番めとも関係しますが、そういうニッチでマニアックなファンと、送り出す側の関係性、コミュニティの在り方、あるいは、今回、Babymetalさんは大阪のみの出演で見ることができませんが、ニッチな市場から一般に広がっていくときに生じるズレ、とそれへの向き合い方、みたいなものをリアルに考える場としてのフェスってのが、当店の長期的な経営上、最も有効な要素なのではないか、と思う次第。

 

 いや、考えてみたら、自分が年齢を重ねて新しい音楽に対する貪欲さや柔軟性が減っている、ってこともあると思うんですが、今回のサマソニ東京初日のトリを見たら、自分の専門ジャンル以外の音楽にどう出会うか、とかすごく難しい問題だな、と改めて。

 だって、今年、海ステがUnderworld、山ステがThe Offspring、そして音ステがAt The Drive-Inですよ。2000年かっ!

 でも、2000年だったら、当時、既にガチのメタル勢として西新宿あたりのレコードショップを徘徊しつつも、なんだかんだで在庫の厚さとポイント還元率の高さで、渋谷タワレコとかにも週2くらいで通ってた身としては、Underworldとか、The Offspringとか、At The Drive-Inとか、どれも自分の主戦場じゃないけど、でも、まずCDジャケット(と店員手書きの推しコメントPOP)は店頭で見かけるし、ロキノンとかも(当該記事を読むかは別として目次くらいは)立ち読みするし、音だって店内放送で掛けられてたり、PVが(まだブラウン管の)モニターで流れてたりして、接する機会は色々あったんですよね。神髄に触れることはなくても、少なくとも、その存在を知る機会はあった。

 

 それが田舎に落ちてきて、自分の主戦場たるメタルのバンドは、オンラインでCDは買えるし、SNSを見ればバンドやレーベル発信の情報を直接受け取ることができるし、YouTubeで(無料で)音源はチェックできるし、こまめにライヴに行けなくても年数回のフェスでマトメて一気に来日公演も見ることができる。

 

 ところが、自分の主戦場以外の音楽と、どこでどう出会うのか。

 今回、ソニックステージは充実のラインナップだけど、正直、その他のステージの出演者とか、名前すら初めて聞いた、みたいなバンドも結構、いるんですよね。

 

 これは単に田舎に住んでて、タワレコ渋谷店というリアル店舗に行く機会が激減したせいなのか(とはいえ、もう一方の雄、HMVは都内ですら店舗自体が激減)。

 ネット経由で自分で探して、自分の欲しいものだけを買うようになったせいなのか。

 あるいは、音楽産業の成熟とともに、ジャンルが細分化しすぎて各バンドが小粒になり、ジャンルの壁を越えられるスターが希少になってしまったせいなのか。

 

 いずれにせよ、向こうからやってくる偶然の出会いが、なぜ、こんなにも減ってしまったのか。

 

 繰り返しますが、自分がオッサンになってしまった結果、実は出会い自体はあるのだけども、感性がニブって、ピンと来ないままノイズとして排除している、という可能性は十分にありますが。

 

 そして、これは音楽以外のありとあらゆる分野についても、考える必要があることだと思うのです。音楽の場合、流通形態の顕著な変化、という分かりやすい事態に陥ってるだけのことで。

 

 たとえば、うちの店の存在を、そもそも本寺小路にめったに来ない人たちに、どうやって知ってもらうのか。外食や(大手の)ビールに興味がない人たちに、そもそも存在そのものをどう気づいてもらえるのか。

 

 さらに、枠組みを大きく広げて言えば、三条市が今のところ面白い街であり、将来もそうであり続ける可能性があるのは、(人口10万いないようなド田舎にしては)新しいものを生み出す力がある街だから、と思っているのですが、その新しいものっていうのは、基本的には、まったく何もないところから生まれてくるのではなくて、普通にやったら結びつかないような全然、異なるアレとコレとを結びつけることで生まれるものだと思っているんです。

 ということは、全然、異なるアレとコレが隣接していて、出くわす可能性がある、ということが重要ではないか。

 そのときに、音楽と同じように、ありとあらゆる情報がタコ壺化して、孤立していく時代なのだとしたら、どうやってかけ離れた情報を組み合わせる方法を保っていくのか。

 

 ジャンルが細分化した音楽シーンの中で、フェスは異なるジャンルを結びつける場として機能しているのか。あるいは、ジャンルが細分化したように見える現代にあっても、若い人たちはフェスなど関係なく多様なジャンルを楽しめているのか。

 

 そのような視点からも今回のサマソニを楽しんでまいりたい。

 

 あ、あとイベントフードのジャンル感とかコスパ感、オペレーションの回し方みたいものも、一応、仕事モードで観察してきます。

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