Beerhouse³ 営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋やってます

メタルってオッサン向け音楽になっていくんですかね(既になってる?)

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 どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。

 

 10月8日(土)、9日(日)とさいたまスーパーアリーナで開催された「Loud Park 2016」に参加してきました。

www.loudpark.com

 

 ここ数年、強まっていた傾向で、出演者が発表になった時点で思ったことでもありますが、今年はまた一段とメタル色が薄く、「ハード・ロック」色の濃い古参・バンドが増えたなぁって印象を会場で改めて受けました。

 

 両日の出演オーダー上位5バンドのアルバム・デビュー年*1と、年数を書き出してみると、以下のとおり。

 

初日:

 Scorpions 1972年デビュー(キャリア44年)
 Dokken 1982年(34年)
 Blind Guardian 1988年(28年/代表作20周年完全再現セット)
 Children of Bodom 1997年(19年)
 Queensryche 1984年(32年)

 2日目

 Whitesnake 1978年デビュー(キャリア38年)
 Nightwish 1997年(19年)
 Dark Funeral 1996年(20年)
 Dizzy Mizz Lizzy 1994年(22年)
 Amorphis 1992年(24年)

 

 一方、Loud Parkの前身イベントと言われるBeast Feastの第1回、ちょうど15年前のBeast Feast 2001出演バンドは下記のとおり。

 

初日

 Slayer 1983年(当時17年)
 Sepultura 1986年(当時15年)
 Static-X 1999年(当時2年)
 United 1990年(当時11年)
 Vision of Disorder 1995年(当時6年)

2日目

 Pantera 1988年(当時13年)*2
 Machinehead 1994年(当時7年)
 One Minute Silence 1998年(当時3年)
 Biohazard 1990年(当時11年)
 Morbid Angel 1989年(当時12年)

 

 つまり、年数だけで言えば、Loud Parkでは中堅イメージのChildren of BodomNightwishが十分、ヘッドライナー級ってことです。

 

 もちろん、15年経って、それでも当時から活動している古参バンドが健在で、バンドの層が厚くなっているのであれば、シーンの健全な成長、と言えるのだと思います。

 

 ただ、本当に層が厚くなっているのか。

 

 彼らはただの懐メロ・バンドになり下がって過去の遺産を食いつぶしているだけではないのか。若い世代にも届き、新しい市場を開拓できるような新しいアルバムを出し続けているのか。

 たとえば、Beast Feastのヘッドライナー、SlayerとPanteraは、全盛期ほどの勢いはないにしても、ちゃんとこの前にアルバムを出した上での来日でしたよね*3

 

 あるいは、単純に古いバンドだけが残って若いバンドが出てこない、という状況だと業界全体として、沈滞していくのでは、と思うわけです。

 若い世代のファンにとって、自分より少し年上、あるいは完全に同年代で、一緒に成長していけるようなバンドがいなくてもよいのか*4

 

 Beast Feastは、どちらかと言うとパンク/ハードコア色の強いハウリング・ブルさんが主催ということで、当時のメタル界隈で主力になりつつあったメロディック・デス・メタル系や、あるいは一般層へのリーチでは当時の潮流だったラップ・メタル/グルーヴ・メタル系は少なめでしたが、それにも関わらず、デビュー後10年以内のバンドがこれだけ上位に食い込んでいた訳です。

 

 あるいは、それこそ今年のヘッドライナー2組で思い出したのは、31年前の1984年に西武球場で開催され、日本初のロックフェスとも呼ばれるらしい「スーパーロック84」というイベントです*5

 出演は、M.S.G.、WhitesnakeScorpionsBon Jovi、Anvilの5組。つまり、今年のLoud Parkは、31年前と大差ないラインナップ…。

 

 客の世代構成、という事情はもちろん、あると思います。

 1991年以前、すなわち「Nevermind」以前であれば、「洋楽ロック」を聴く人のかなりの割合がハードロック/ヘヴィメタルを聴いており、さらにハードロック/ヘヴィメタルも今ほどサブジャンルが細分化されておらず、割と幅広いバンドを聴く人が多かったのでしょうから、より多くの人に知名度があるバンドが多いのであろうことは容易に想像できます。

 うちの店でも、たまに70年代、80年代のアルバムを掛けているときの「懐かしい」という反応の方が、最近のアルバムを掛けているときの反応よりも多いです。

 

 そして、それらの世代は人口比率で、そもそも現代の若者よりも人数が多く、しかも、今、彼らの大半は子育てを終えて自由に使える時間を手に入れ、年功序列型賃金制度の日本では自由に使える金も多く持っている。

 

 フェスの収益構造のうち、前売チケット、マーチャンダイズ、飲食、放映権・録音物・映像の割合がどの程度かはわかりませんが、主催者としては前売が重要な要素だとすれば、中高年というボリュームゾーンに対して知名度が高いバンドを使った方が、チケットは売りやすく、全体の収益計画も立てやすいのでしょう。

 

 ただ、それで若い人たちは、楽しめるのか。

 

 若い人など楽しまなくてもよいのだ、というのも1つの考え方だとは思います。

 

 バンドメンバーが年を重ね、ファンも年を取るのに合わせて、音楽性を変化させ、大人が楽しめるバンドとして成熟していく、という道もあるのだろう、とは思います。1つのバンド、1人のアーティストの生き方としては、確かに、そういう道もあるとは思います。思いますが、それだと、ジャンルとしては結局、衰退していくんじゃないかな、と思うわけです。

 

 いや、衰退しないジャンルなんてないんだよ、と言われてしまえば、そうかもね、という気もするのですが。若い人には若い人が楽しめるもっと違うジャンルが、きっとあるのでしょうし。

 

 ただ、自分は、商売、仕事、あるいは生き方といった世の中の様々な事象を考える上で、ヘヴィメタルという音楽ジャンルの存在、楽曲、ミュージシャンやレーベル関係者の存在に大きな影響を受けてきたので、若い人たちにも楽しんでもらえる機会があるといいし、少しもったいないかな、と思うわけです。

 

 次は11月5日(土)6日(日)のKnot Fest Japan 2016ですが、そういった意味ではもう少し期待しています*6

knotfestjapan.com

*1:結成年だと色々ややこしいので、デビューまでの活動歴には目をつぶって

*2:フィル加入前は別バンドでしょう

*3:Panteraはこれで事実上解散してしまいますが…

*4:自分の世代で言えば、北欧メロディック・デスからメタルコアというサブジャンルの勃興自体がまさにそれだと思うのですが

*5:西武球場以外にもツアーしていたらしい

*6:もちろんLoud Park差別化戦略として、Summer Sonic、Knot Festと住み分けた結果がオッサン向けってこともあるかもしれません