Beerhouse³ 営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋やってます

人を追い込む仕事のさせ方

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奇声をあげるスーツ姿の外資系役員|フリー写真素材・無料ダウンロード-ぱくたそ

 

 どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。

 

 先日、10月8日(土)、9日(日)とさいたまスーパーアリーナで開催された「Loud Park 2016」に参加してきたのですが、セットチェンジの合間にSNSを眺めてると、音楽ネタに紛れて、東大を出て電通に入って1年目の女性が過労から自殺した、という事件についてのコメントが、ちょいちょい流れてきていました。

 

beerhousecubed.hatenablog.com

 

 主な論点としては、

 

 ・100時間が長すぎるのか 

 ・認定されたのが100時間だけで実際はもっとだろう 

 ・時間よりも仕事の内容ではないか

 ・過労と言うよりパワハラ・セクハラではないか

 ・これは日本全体の問題を象徴する事件なのか

 ・電通広告業界の特殊な問題なのか

などなど。

 

 この事件について、と言うよりも一般論として、過労で心身がまいってしまうとき、もちろん労働時間という量の問題はあるのだろうとは思いますが(特に睡眠時間を削るような長時間の拘束に至った場合)、それよりは質の方が問題としては大きいのかな、と個人的には思うところです。

 

 自分に限らず、たいていの個人事業主は、目が覚めている間ずっと仕事、寝る時間も惜しんで仕事、というのが普通だと思うのですが*1、それでもメンタルをやられることが少ないのは、自分の自由に仕事が出来ているから、だと思うのですよね。

 

 一方で、どんなに頑健な心身を持っている人でも追い込んでしまう、という働き方もあります。

 

1 無駄な仕事を繰り返させる

 これは、戦時捕虜のプライドを打ち砕き、反抗や逃走をを諦めさせ、絶対服従を強いるために行われる手法として、どこかで読んだ話。

 

1.1 地面に穴を掘らせる(時間と体力は使うが単純な仕事を与える)

1.2 穴が掘り終わりかけたところで、「誰がこんなところに穴を掘れと言った? 早く埋め戻せ」と言う。

1.2b 「あなたが掘れと言ったのでは?」と反論された場合には、「お前がトロトロ作業している間に事情が変わったのだ、早く埋め戻せ。それともお前がこの穴に埋められたいか?」と言い返す。

1.3 穴が埋まりかけたところで、再び「早く穴を掘れ」と指示する。

 以下、この作業を繰り返す。

 

 この仕事のポイントは、ひたすら単純で何も創造性がないけれども、体力と時間を浪費する仕事をやらせた上で、その完成直前で、今までの仕事を全否定する。無意味な仕事に没頭させることで、相手に無力感を植え付ける。

 

2 意思決定を常に否定する

 これは、家庭内暴力(DV)などの夫婦関係の服従関係についての本か何かで読んだ話。

 

2.1 相手に何か依頼する

2.2 相手の仕事ぶりについて、なんでもいいのでダメ出しをし、最後に「こんな簡単なこともできないのか。分からずに失敗するなら、失敗する前に質問しろ」と言う。

2.3 相手に別の何かを依頼する

2.4 先の指示を真に受けて相手が質問してきたら、「そんなことも分からないのか、そのくらいのことは自分で考えろ!」と言う。

2.5 この指示を真に受けて相手が自分で考えて作業をしたら、2.2に戻る。

 以下、これを繰り返す。

 

 この仕事では、とにかく相手が自分の頭で考えることを否定し、常に指示が必要な状況に追い込み、従属関係を強固にする。

 

 もちろん、1と2の方法を組み合わせて、さらに相手を追い込む、という方法もあるでしょう。

 

 それでは、逆に、こういう仕事を押し付けられたときに、対抗する手段があるのか。ロジカルに相手の指示内容を考え、先回りをしてダメ出しをさせない、という方法もあるにはあると思います。

 ただ、往々にして、こういう指示を出す人間は、よい仕事の成果を残したいと言うよりも、ただ単に自分の立場を利用して相手を振り回したいだけ、相手を振り回すことで力関係を確認させたいだけ、なので、完膚なきまでに叩き潰さない限りは向こうも必死で抑え込もうとするハズです。

 そして、それだけの労力をかけて挑戦する価値がある相手なのか、と考えると、何か社会正義を背負って立ち向かわない限り、相手を黙らせる行為への徒労感が募るだけではないでしょうか。

 

 だから、正しい対処法は、「逃げ出す」ことしかないと思うのです。

 

 向こうは多分、「逃げるのか、負け犬め」とか言ってくるのだと思いますが、こういう愚か者に勝ったところで得られる物など、ただ勝ったという、ちっぽけな満足感しかなく、時間と労力のムダというより他にありません。

 

 もちろん、今回の事件のように、それなりに憧れの対象となるような企業の新卒1年目で逃げ出せるのか、という問題はありますし、精神的に追い詰められてくると、文字通り人生のかかった大きな判断を下すだけの余裕もなくなってくる、とは思います。

 

 だから、できることは、日ごろから自分の人生の中で譲れないことは何か、と自問し続け、危ういと思ったら、誰かに愚痴をこぼし、ひとまず仕事を休んでみる、くらいのことかと思う次第です。

 

 まあ、新卒での就職活動を放棄し、やっと拾ってもらった市役所も9年で辞めた身としましては、既存のレールを外れたところで、自分の優先順位を常に確かめて進めば、人生、意外とどうにかなる、ということです。

 それでもしも、自分の優先順位が世間のそれとズレたときには、「あのブドウは酸っぱい」と言ってみることも大事なんじゃないでしょうか。だって、酸っぱいブドウ食っても、うまくないと思うんですよ、実際。

*1:普通でもないのか? でも、自分の場合、趣味と仕事に切れ目がなく、家族もいないので