Beerhouse3営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋はじめました

木下斉「地方創生大全」読みました。読みましょう。

  うん、この本は、みんな…少なくとも、まちづくりだとか地域活性化に興味があったり、実際に関わったりしている人たちは、読んだ方がよい。

 

地方創生大全

地方創生大全

 

 

 と言うわけで、どうも、新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。

 しがないビール屋ですから、まちづくりとかにはあんまり関わっておりません。

 

 さて、個人的には、本書の著者、木下斉さんについては、前職在籍中から何冊か著作も読んでいて、またtwitter等を通じて、最近の言説もちょいちょい追っているので、本書を通じて、それほど新しい発見が多いわけではなかったのですが。

 特に、今回は買って読んでいる最中に気が付いたのですが、出版元が東洋経済、ということで、昨年から東洋経済オンラインに掲載されていた下記連載がベースになっていることもあり。

 

toyokeizai.net

 

 それでも1500円+消費税+読む時間をかけるだけの価値は、まあ、多くの人にとって、あるんじゃないか。

 と言うことで、以下、なぜ読んだ方がよいか、の理由を、対象を大きく2つに分けて。

 

 

木下斉の著作を読んだことがない人が読むべき理由

 少なくとも、まちづくりや地域活性化に、趣味であれ、仕事であれ、社会貢献であれ、関わっている人で、2016年現在、木下斉の著作を1冊も読んだことがない、というのは、ちょっと、もぐりじゃなかろうか。

 

 「学校の勉強は社会に出たら役に立たない」という一派が存在します。

 彼らの主張の1つに、「学校のテスト問題は、所詮、決められた範囲内から明文化された問題が出され、しかも、過去に誰かが一度は解いたことがある問題を、ただ正確に解くだけだが、それに対して社会に出たら、解決すべき問題を、まず正しく定義するところから始まる」というものがあります。

 これについて、社会での課題っていうのも、実は、問題自体は多くの人によって特定されていて、ただ社会環境が時々刻々と変化していく中で、限られたリソースしか投入できないときに、最適な解法を特定することが難しいってことじゃねーかな、と思うんですよね。

 

 社会問題の多くは既に特定されている。

 

 だったら、他人が特定した問題をまず確認してみる、ってのは問題解決の効率を上げるハッキングの1歩目ではないだろうか。

 

 そして、少なくとも、2016年の日本における、まちづくりだとか地域活性化に関連する、全国で共通する普遍的な課題の数々を、最も明快に特定している人物の一人が木下さんじゃないか、と思うわけです。

 

 なので、将来のわがまちをどうしていこう、とアレコレ思案する前に、まず立ち向かう課題を整理するために、1500円+税を支払うべき。

 

 もちろん、普遍的な課題を認識したところで、その課題が目の前の事象に当てはめると具体的にどうなのか、という検証は必要だし、木下さんが提示する解決策、というのも一案でしかなく、目の前の事象に当てはめてみたとき、その地域、そのチーム、各個人の資質や価値観によって、採るべき解法は異なるかもしれないけれど、まずは、正しく問題を定義する、という作業をハックするために、読むべき。

 

 あるいは、世の中には、「インプットなど、どうでもよいのだ、実践の中でのアウトプットだけが重要なのだ」ということで、特段、他人の著作など読まずとも着実に成果を挙げている方もいるとは思います。

 そういう方でも読む価値があるとすれば、2点。

 

 まず、たぶん、自分がやってきたことが、どれだけ正しいことかを確認し、自信を付け、また、更に完成度を上げるための穴がないか、という点検には役立つ、と思います。

 

 また、そのようにして、自分のこれまでの成果を客観的に見つめなおすことは、自分の今後の事業展開の精度を上げるだけではなく、自分のやり方を他者と共有しやすくし、地域内の協力者を増やし、あるいはまた他地域の発展にも貢献するのではないでしょうか。

 事業展開の先駆者が、そのノウハウを地域内の他者や他地域に共有すべきか。

 もちろん、単に、地域内外の他者の支援、社会貢献という意味もあると思います。

 それに加えて、自分のノウハウを共有し、それをもとに試行錯誤を繰り返す人が増えれば、その試行錯誤の結果を自分にフィードバックすることで、自分1人でやるよりも、加速度的に業務改善が可能になる、というオープン・イノベーションってヤツに興味はありませんか? という話です。

 

木下斉の著作を何冊か読んだことがある人が改めて読むべき理由

 過去に読んだことがある人であれば、前述のとおり、同じ話も多いです。でも、それは木下さんがブレない軸を持って事業に取り組み、着実に成果を積み重ねている、ということの表れでもあると思うのです。

 

 過去に木下さんの著作を読んだ方ならご理解されている通り、彼の著作では、地域活性化に起こりがちな問題点を分かりやすく整理しているため、一度読んで終わりにする、と言うよりも、定期的に読み直すことが、自分の事業の立ち位置を振り返り、より精度を上げるのに役立つものと思います。

 

 また、自分が取り組んでいる事業を、他人の文章を通じて振り返ることで、自分の頭の中にある概念の言語化を促す、という効果も期待できます。

 自分の頭の中にあることを誰かと共有するためには、とにかく分かりやすい言語化が必要で、彼の著作を通じて、「かねて他者にどう説明しても伝わらなかった自分の問題意識が、こういう説明の仕方をすれば、伝わるかも」という発見もあると思います。

 

 自分たちの事業を理解していない人間を仲間に引き入れるのは危険ですし、ハナから何も理解をする気がない老害はなぎ倒して進んでいくしかありませんが、とはいえ、自分たちが事業を通じて世の中を本当に変えよう、前に進めていこうと思ったら、協力者は多ければ多いほどいいわけです。

 となれば、どうやれば自分たちのアタマの中にある概念を、分かりやすい言葉に変えて、まわりの理解を得、協力者に変えていけるのか。

 

 その際、過去の著作を定期的に読み直して、改めて自分たちの事業を点検する、というやり方もよいのでしょうが、最新の著作を読み直せば、少しは新しい、アップデートされた知見も入ってくるので、たかだか1500円+税くらいの投資効果はあるのではないでしょうか。

 ほとんど同じ内容であっても新しい本の方が読むときの気持ちも新しく読めますし。

 

補足:個人的に面白かったところ

 あまり新しい発見はない、とは言え、すべてが焼き直しではないし、以前には気にならなかった部分が改めて読んでみると、ストンと落ちる、ということもあるかと思います。

 

 以下、引用。

 地域活性化を推進する上では、3つの壁があります。

 ひとつ目は「事業の壁」です。(略)

 2つ目は「制度の壁」です。(略)

 最後のひとつ、かつ最大の壁が「組織の壁」です。(略)事業や制度と違って、組織は個人の集合体ですから、極めて属人的で情緒的で、個々人の生活やプライドと直接的に結びついているため、打開が難しい。

 ですから、確実に成果をあげる取り組みの多くは、「既存の組織を変化させる」なんてことに労力を割くのではなく、「新たな組織をつくる」ことで、この壁を突破しています。    (p.234)

 

 これな。

 

 前職では比較的、外部のいくつかの団体さんとご一緒に事業に取り組む機会が多かったので、本当にこれは痛感するところ。

 

 各団体からの「推薦」で集められた委員による、何のために集まっているのかも理解しておらず、したがって何のアイディアもなく、何の実効性もない団体。

 あるいは、既存の団体に新しい事業を提案するけど、上手く伝わらず進まない。

 あるいは、全然、動かないならまだしも、新規事業もあらぬ方向に動き出すわ、元の団体の存在理由も混乱し始めて、あわや団体の解散危機。

 あるいは、事務局的ポジションで関わる団体に対して、外部から事業提案をいただくも、どう見ても団体の設立目的に合わないので、やんわり断ると「やる気がない」と罵られる(じゃー、おめーが勝手にやれよ)。

 

 なので、いけのは前職の終盤、3~4年は、似たようなメンバー、似たような趣旨の団体でも、個別の事業ごとに乱立するのは全然OK、というスタンスでおりました。

 事業の目的や内容ごとに、それを理解できる最適なメンバーで動くべきだ、と。

 もちろん、メンバーが微妙に重ならない部分も出てくるので、そこの情報共有は大事ですが、いかに美しい組織図を描けるか、よりも、事業目的を明確にして実効性を持って取り組む、という方がはるかに重要だと思った次第。

 

 地位と権力とかバックに誰がいるとかじゃなく、目的を共有することで、能動的に動ける人たちで事業をやってった方が、精度も効率もいいし、何より楽しいですよね、と言いたいじゃないですか、21世紀の民主主義国家ならば。

 実際には、上から命令されないと(=責任を他人に押し付けないと)動けない人も多いのかもしれないですけれど。

 

 前職の所属組織そのものについては、まあ、そういうことで退職前に「組織はそのうち変わっていくから、しばらく我慢だよ」とか「君が変えていくんだよ」と言っていただく機会もありましたが、ですので、組織を変えようなんて、徒労ですよ、徒労。

 少なくとも、この「組織は個人の集合体ですから、極めて属人的で情緒的で、個々人の生活やプライドと直接的に結びついている」って事実すら直視できない人たちが動かそうとしている組織の中ではね。