Beerhouse3営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋はじめました

ナショジオ17年2月号「酒の誕生」を読む

 どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。

 

 ちょっと古い号なんですが、ナショナル・ジオグラフィックの2017年2月号の特集が「酒の誕生 人間との長くて深い仲」ってのを、最近、ネットで見かけて、買って読みました。

 オンラインだとデジタル版のバックナンバーしか見つけられず、わざわざ新潟市内のリアル書店まで出かけましたが…。

 

 

 

 ざっくりとしたイントロダクションは、ナショジオ公式のこちらもどうぞ。

natgeo.nikkeibp.co.jp

 

 ナショジオ買うの久しぶりでしたが、全140ページ中、この特集が約25ページ、と言っても大判の写真がふんだんにあり、図表もあるので、文章としては実質10ページくらいですかね。

 あと、まだまだ研究中で検証が必要な仮説中心の文章のため、一人歩きするとトンデモな論拠になりそうな雰囲気もありつつ。

 

 とは言え、ネガティヴ要因としては、そんなもんで、あとは楽しく読めました。

 

 以下、要点抽出して紹介&自分用メモ。

 

 まず、ヒト以前の進化史。

 

 人類が代謝できるアルコールはエタノール(C2H5OH)だけ、とはいえ、ほとんどの生物にとって、エタノールですら「毒」。

 酵母にとっては、果実などに住み着いて糖分を代謝してアルコールを生成することは、競合する微生物を排除するためには、有効な手段。

 人類が他のサルから枝分かれする前、1000万年前にアルコールを代謝する能力を身に着けたのも、糖分を他の動物よりも効率的に確保するためらしい。

 酵母がすみつきアルコールを生むほどに熟した果実は消化しやすく、人類はアルコールを代謝できることで、より多くの栄養を手に入れることができた。

 

 これは、一部のスタイルのビールの魅力でもありますが、果実の甘い香りに含まれるエステル類や「芳香族」を含むフェノール類などの高分子のアルコール類は、単純に「いい匂い」のものが多く、人類が「糖」の匂いと混同して甘く感じてしまうってのは、ありますよねぇ。

 甘い匂いに人類は引きつけられてしまう。

 

 さらに、はじめは栄養確保のためにアルコールを追った人類も、酩酊することで文明の発展が刺激された、という仮説。

 

 人類がどのように狩猟採集社会から定住型の農耕社会に移行し、そこで宗教や文明を生み出していったか、というのは研究途上の分野なのですが、トルコのギョベクリ・テペ遺跡は、農耕以前の1万2千年前の遺跡にも関わらず、既に祭壇のような痕跡が見られる、とのこと。

 

ギョベクリ・テペ - Wikipedia

 

 従来、人が農耕をはじめ、組織的な作業が必要なために、統治手段としての宗教が生まれた、と考えられていたけれど、はじめに宗教があり、その儀式を行うために、農耕をはじめたのではないか。

 大規模な祭壇の造営のための食糧確保、あるいは酒の酩酊感を利用した神々との対話、あるいは不安を和らげ連帯するために。

 食料にせよ酒の原料にせよ、大量の穀物が必要になったために、定住し、農耕を行うようになったのではないか、という仮説。

 さすがに、酒を飲みたいから定住して農業を始めた、とかいう仮説はラディカルすぎる気もしますが…。

 

 ギョベクリ・テペ遺跡から見つかった甕(かめ)の中には、水と穀物が入っていた痕跡があり、発酵は現在、確認できていないため、造営に駆り出された人員の腹を満たすためのお粥だった可能性もあるけれど、祭祀のためのビールだった可能性も十分ある、と。

 また、後世、エジプトのピラミッド造営には、ビールが振舞われた、というのも有名な話。

   

 少し時代が下って、オリエントに文明が発生した頃には、酵母による殺菌効果で酒は水よりも安全な飲み物となり、また、発酵によるビタミンB群の生成により「飲むパン」として、必要不可欠な飲み物となっていく。

 

 ビールを飲めば、必要な栄養は摂取できます。高度な文明が世界で最初に中近東に出現したのは、そのおかげだと私は確信しています。

 

 さらに、文明が発達すると、「酔う」ことが、いくつかの宗教では禁止されながらも、その価値がより高く評価され、人類は節度のある酒との付き合い方を模索してきた、と。

 

 あ、そうそう、最後に、不満点をもう1つ述べれば、やはりこの内容で本1冊分くらいにはなりそうな話で、文中に登場する個々の研究者の研究内容をもう少し掘り下げたいのだけれど、(まだ調べていませんが)おそらく日本語の文献は期待できなそうで、英語文献に当たる場合には、研究者氏名がカナ表記だと、ちょっと手間取りそう…。

 まあ、機会があれば、その辺も今後、掘り下げて読んでみたい気はします…。気は…。