Beerhouse³ 営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋やってます

レイ・クロックほか「成功はゴミ箱の中に」を読むvol.2

 どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。

 

 マクドナルドのフランチャイズ権をマクドナルド兄弟から獲得し、世界一のフランチャイズ・チェーンに育て上げたレイ・クロックの自伝、「成功はゴミ箱の中に」、第2回です。

 

成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS)

成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS)

 

 

 1回目はこちらです。

 

beerhousecubed.hatenablog.com

 

  今回は、フランチャイズに着手してから、ニューヨーク証券取引所に上場を果たし、いわゆる一流企業の仲間入りを果たすまでの第7章から第12章です。

 

 このあたりは経営書的な観点からはやや散漫な印象で、あくまで自伝であるため、時系列に沿って様々なトラブルと、その対応に当たった部下やパートナーの紹介を続けていく展開となっています。

 

 私はセールスマンとして実践の場で培ってきた勘と、主観的人物評価を頼りに突き進んでいくタイプだった。(略)口で言えることは、経営学の教科書に書かれているようなありふれたものであり、つまらない答えになるだろう。選択基準を言葉で説明するのは非常に難しい。教科書やルールで明確に定められたものではなく、状況に応じて、直感的に判断されるものだからである。

 

 もちろん、それぞれのエピソードの中で業務改善の具体的な事例や、レイ・クロックの経営哲学にも触れているので、ある特定の課題、問題意識を持って読む人には、それらが引っかかる部分もあるでしょう。

 

 このパートの全体を通しての感想としては、大きく2点、ブランド化と金融のそれぞれの重要性です。

 

 ブランド化については、ブランドと言う言葉は一言も出てこないのですが、レイ・クロックがどの店に行っても完全に同じサービスを提供できることにこだわったこと。これはつまり消費者がマクドナルドと言ったときに思い浮かべる内容を均一化し、混乱させない、ということであり、ブランド化と言って差し支えないでしょう。

 

 我々はマクドナルドを名前以上の存在にしたかった。マクドナルドを、安定した品質と運営が標準化された、レストランのシステムの代名詞としたかったのだ。特定の店舗やフランチャイズオーナーのクオリティによって顧客を増やすのではなく、どの店に行っても同じサービスが受けられるというように、マクドナルドのシステム自体に対するリピーターをつくりたかった。

 

 そして、ここを徹底して磨くことで、フランチャイズ経営の効率化が図られる。

 一方、当時の現場が実際どうだったのかは分かりませんが、レイ・クロックはある程度、現場の自主性も尊重していたような発言が見られます。

  

 たとえば、フランチャイズの各店に商品の供給をするとしても、決定権は各店に任せ、サプライヤーとしての利益は追求しない、という考え方。

 サプライヤーになってしまえば、自分の利益の方が心配で、相手のビジネスの状態などは二の次になってしまうだろう。自分の収益を上げるために、商品の品質を下げることも考えるかもしれない。そうなれば、フランチャイズは損害を被り、長い目で見れば、その損害は自分たちにも返ってくる結果となる。

 

 

 あるいは部下への態度として、

 

 人に仕事を任せるのなら、最後まで口出ししないのが私の信条だった。

 口出ししたくなるなら、最初から任せなければいい。

 

 

 そう考えると、店舗での業務改善についても単なる効率以上の考えが、この人にはあるのかもしれません。

 

 こうした改良の目的は、従業員の仕事を簡素化し、能率を上げることであった。そのほかのコスト削減、在庫管理などといった考慮すべき事項は、確かに重要ではあるが、我々には実際に作業をする従業員がいちばん重要だった。

 

 もう一点の金融の重要性については、各所で語られているのですが、アメリカ経済の成長期だったこともあり、とにかく投資して店舗を開発し、それをフランチャイズオーナーに渡して店舗からの収益を次の店舗に回す、というのが初期のマクドナルドのビジネスモデルだったようです。

 つまり、ハンバーガー屋のフリをして実態は不動産業。

 ところが、設立当初から財務を任せていた片腕について、彼がマクドナルドを不動産事業と考え、ハンバーガー屋とは考えていないことが分かった、として批判します。

 続けて、

 

 会社はハンバーガーレストラン事業であり、その成長の源泉は個々の店長やオーナーのやる気次第だからだ。

 

 一般にフランチャイズ事業と言えば、仕組みを作って、仕組みを売ることで儲ける商売のように考えがちですが、どうもレイ・クロックと言う人は、人が努力する仕組みをつくり、努力をしてもらうことで、収益が上がってくる、という構図でモノを考えているのかな、と思います。

 実際、現場ではキレイゴトだけでは済まないのでしょうが、しかし、現場に実在する人間の存在を無視して、書類上の数字だけを追っても物事は回らない、ということでしょうか。

 

 いずれにせよ、自分たちの事業ドメイン、収益構造をどのように定義するのか、というのが会社経営では非常に重要なのかな、と思わされた次第。