イカの一夜干しのイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや
どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。
当店では開店以来、お通しを出していませんでした。
が、来ていただく皆さんの反応を見てると、お通しあった方がいいのかな、とも最近、思う次第。
てことで、とりあえず実験的に1週間だけお通し出してみます。一夜干しのイカを出す予定はありませんが。
【お通しウィーク開催概要】
期日:
2017年12月5日(火) ~ 12月10日(日)
システム:
午後8時まで
自動的には出ません。お通し希望の方はお声がけください。
午後8時から
自動的に出ます。お通し不要の方はお声がけください。
ソフトドリンクの方にもお出しします。
料金:
300円(予定)
提供内容:
未定ですが、理想的には毎日違うものをご用意できれば。
なお、冒頭のイカの一夜干しはイメージです。提供する予定はありません。
【お通しを普段出さない理由】
個人的に、客として、あんまり好きじゃないんですよね。
いや、飲食店を経営する側の立場になってみると、出す理由もいくつか理解はできるようにはなったんですが。
出す側の事情は後でまた書くとして、個人的には、飲食店には行くときは食べるのが「主」で、飲み物は「従」って感じなんです。
店でもちょいちょい言ってますが、そもそも生まれてこの方、「酔いたい」と思ったことが一度もなく、クラフトビールにハマるまでは大して酒も飲まない人間だったし、今も特においしくない酒なら全然飲まなくていい人間なので(もちろん酒を飲めば酔いますし、酔えば周囲の方にご迷惑をおかけすることもありますが…)。
で、食べるために出かけるのだから、食べるものは自分で選びたい、と思うのです。
クラフトビールにハマってからも、クラフトビールは個性が強いものが多くて、合うツマミは最高に合うけど、合わないヤツは徹底的に合わないので、自分が飲みたいビールに合わせて食べるツマミも選びたいですし(あるいは逆に、食べたいツマミに飲みたいビールを合わせたい)。
なので、お通しが自動的に出てくることについては個人的には解せない。
まだ、それが単純なサービスで出てくるならともかく、後で明細見るとちゃんと値段ついているし。
特に、うちの店は現状1杯だけさくっと飲んでさっと帰る、という使い方をしていただいてもいっこう構わない、という姿勢ですので、なおさらお通し要らないかな、と思っている次第です。
【お通しを出す側の事情(飲食店経営に興味がある人向け)】
とは言え、飲食店を経営する側の立場としては、まあ、お通しを出す側の事情も色々と分かります。
以下、今回の実験で狙うところの意図など、飲食店経営に興味ある方だけお読みください。
とりあえず何かを出したい
一般的に、飲食店では注文をいただいてから作り始めるものが多いため、提供までにお時間をいただくものが結構、多い。
だと、ビールとかの場合、最初の一皿が出るまでに飲み終わってしまう場合も多い。
そこで、とりあえずの場つなぎとして、あらかじめ用意済みの一皿をさっと出す、というのが、お通しを出す最大の理由と思うところです。
いや、自分は客として飲食店に行く場合には、メニューを見て早く出てきそうなものを最初に頼んでおくんですが、そこを選ぶのが面倒、という方も一定の割合でいらっしゃるんだな、と店をやってて思う次第。
また、フランス料理でいう「アミューズ」ってヤツの場合だと、その最初の一皿で、シェフの世界観を匂わせ、これから出てくる料理に期待感を抱かせるんだそうです。
まあ、そこまで凝ったものをやるつもりはありませんが…。
メニューの紹介
これは、デパ地下やスーパーの試食コーナーのようなものです。
飲食店の難しいところは、普段、家庭で(あるいは今の時代、他の店で)日常的に食べられるものを出しても、あんまり仕事にならない部分がありまして。この店にわざわざ来ないと食べられないもの、というのが大事なわけです。
それでは、と、よそと違うメニューを用意すると…人間ってのは、そんなに柔軟な生き物ではないのですよ。自分の知っている範囲の外側にあるものには、あんまり興味を持たないんです。いくら、好奇心旺盛な人でも、リスク回避の方が先に立つ。
なので、他では食べられないものを用意すると、それがどういう料理か分かりづらい。
分からないので、注文されない。
そこで、たとえば、お通しとして、一定の頻度で通常メニューも少し提供してみる。そこで気に入ってもらえば、次の注文につながる、という部分もあろうかと思います。
これは、必ずしも、普段と全く同じメニューから選ばずとも、先ほどのアミューズのように、この店のフードメニューはこういう方向性なんだな、と知っていただく機会、と考えてもよいかもしれません。
メニューの多様化、レパートリーの充実
これは飲食店一般の話、と言うよりも、うちに限定的な話です。
現状、うちは小さな店なので、一日の来客数もそう多くなくても維持できていますし、さらに、その少ない来店者がどのフードを頼むか、という部分でも、うちは1日に1品も出ないメニューが結構、多い店です。
そこで必然的に、ある程度、長期保存可能でロス率の低いものがメニューの中心になりがち。
出そうな分を少量だけ(一人前とか)仕込むのも、それはそれで無駄が多いですし。
となると、元々、自分が飲む側にいて、このビールにこのつまみを合わせたら旨いんですよねぇ、って食べ物の中でも、保存期間やオペレーションの都合でメニューに入れられてないものも結構、あるんです。
それが、お通しでその日、お越しいただいた方には全員、自動的に食べていただく、となれば、ある程度まとまった量を仕込めるので、料理の幅が広がる、というのは、あると思います。
特に、元々、飲食店経験がある訳でなく、料理のレパートリーがそう多くない自分としては、毎日何らか仕込みをするってことで、調理技術であったり食材の組み合わせであったりで学べる部分も多いと思うんです。
そこから通常メニューの幅も広げられるかもしれない。
席料を頂きたい
お通しを出したい理由を店側からの視点を中心に書いてきましたが、これは中でも取り分け店の経営サイドに立った理由です。
と言うか、これまでの3点は、何なら「出したないなら勝手に出せ、ただし無料で」と思われても仕方ない理由です*1。
お通しの最も本質的な位置づけは、本来、席料(テーブルチャージ)を頂きたいけど代わりにお通し代として頂く、あるいは席料を頂く代わりにサービスでお通しを付ける、ってところな気がします。
席料とお通し、両方取ってるお店とかも、まあ、ありますが。
席料のメカニズムについては、飲食店経営の中でも重要な部分なので、機会があれば別途、詳しく考察したいと思いますが、飲食店を経営していく上で発生する費用をどのように価格に反映させれば、なるべく公平、かつ分かりやすくなるか、という問題です。
飲食店経営では固定費、つまり家賃や設備費、水道光熱費など、場所の維持に関わる経費、というのは結構、バカにできません。特に地方都市の小さい店の場合。
これを負担していただくに当たり、平均滞在時間が長めで、席数も固定された飲食店では、個々の商品ごとに固定費を乗せるよりも、カラオケボックスのように「場所の利用料」として固定費分を負担いただいた方が、公平で明快な価格設定となる、という発想です。
せっかく来てくれた人にはゆっくりとくつろいでもらいたいだろうし、お酒が強くない人に無理して飲んでもらうのも嫌だろうし。
当店の場合は、元々、ビールという気楽な飲み物を主体とすることで回転率を上げたり、営業時間を長く設定することで来店を分散するなど、利用者一人当たりの固定費負担を圧縮する方向で価格設定しております。
ただ、やっぱり夜の遅い時間に来ていただく人たちは、バー感覚で来ていただくことが多いんですよね。
これは開店時には、ちょっと想定外でした。
バー感覚で来てバー的な利用をしたい人が多いなら、価格設定もそうしないと、他の時間帯に使ってくださる人たちにとってフェアじゃないな、ってことです。
在庫ロス≒原価率の圧縮
これも経営的な観点からお通しを考える部分で、こちらは逆に飲食店、特に小規模店では見過ごせない食材の廃棄に伴う原材料費高騰をどう圧縮するか、という観点。
単純に、多めに仕入れた方が安いので必要以上に仕入れたけど廃棄するのはもったいない材料を捨てずに使う。あるいは前日多めに仕入れたけど思ったほど注文が出ず余ってしまった材料、あるいは仕込んだけど出なかったメニュー。
それらをアレンジ、リメイクして、お通しに使うことができれば、材料のロスを圧縮し、原価率の高止まりを軽減できる、という話です。
まあ、これも最初の3つと同様、「捨てるのがもったいないのは分かる、無料で出せ」と言われたら、まあ、そうですかね、と言う話ですが、ですので、発生した経費はどこかで誰かに負担していただかないと経営は維持できないので、喜んで負担したくなる形にちゃんとアレンジできるか、てのがポイントなのでしょう。
以上、何を出すかは、まだ全く考えていませんが、6日間、よろしくお願いいたします。
*1:もっとも飲食店は売上から費用を引いて利益が出て初めて維持継続できるので、それ自体を無料で提供していてもどこかで誰かに負担していただいている訳ですが