Beerhouse3営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋はじめました

竹中功「お金をかけずにモノを売る広報視点」を読む

 どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。

 

 漫才ブーム真っただ中の1981年に吉本興業に入社し、新設の宣伝広報室に配属されて以来、30年以上にわたって吉本の広報を務めた竹中さんの著作を読みました。

 この本を読むまでお名前を存じ上げませんでしたが、広報、と言っても、新設部署ということもあって、ある種の遊撃的な組織だったようで、PRのみに収まらず、若手芸人育成学校NSCの立ち上げや、続いて、その受け皿としての二丁目劇場の立ち上げ、吉本新喜劇の立て直しなど、数々の事業の構想、運営にも携わった方、とのこと。

 

お金をかけずにモノを売る広報視点

お金をかけずにモノを売る広報視点

 

 

 

 芸人は人気が売上に直結する商売ですので、とにかく話題になることが重要で、そのためにお金を掛けずにメディアに露出したり、口コミを広げていく、広報という視点を持ちながら事業を構想・運営することが相性がよい点は多かったのでしょう。

 一方、インターネットの登場で、誰もが発信者になれるのと同時に、大量の情報があふれる中で埋没せず、自己の存在を発信しなければならない現代では、いわゆる「バズる」こと、情報を的確に発信し、話題になることは、どのような業種でも重要な経営手段と言えるかと思います。

 

 NSC1期生のダウンタウンのエピソードをはじめ、1980年代以降の吉本興行の勃興に興味のある人であれば、そのあたり、大変、興味深く読めるのではないか、と感じました。

 ただ、特に前半は、個人の経験に基づくエピソードに終始しており、確立したメソッドのようなものではないので、ちょっとした発想のヒントにはなっても、明日からすぐに使えるメソッドのようなものにマトマっている訳ではありません。

 後半の謝罪(前著は主にこれを扱った、とのこと)に関する考え方や、仕事そのものに対する姿勢などは、ある程度、マトマっていて、講演活動などで、ある程度、整理されているように感じました。

 エピソード中心の前半と方法論中心で具体のエピソードが弱い後半とで、少しちぐはぐな印象もありました。

 

よい謝罪 仕事の危機を乗り切るための謝る技術

よい謝罪 仕事の危機を乗り切るための謝る技術

 

 

 とはいえ、文字も行間も大きめで1ページ600字弱×200ページ強、さすがに吉本興業の元社員だけあって、笑えるエピソードも挟みながら、テンポよく読めるので、80年代~90年代の吉本興業に興味のある方であれば、楽しく読めると思います。

 

 …ただ、まあ、吉本興業勃興期のエピソードからの事業構想論、という意味では、著者の先輩で本書でも随所に登場する、現在の吉本興業社長の大崎さん*1や、その上司であった木村さんの話も伺ってみたい、という思いを強くした訳ではありますが。

 

大崎洋 - Wikipedia

 

 また、お名前くらいしか存じませんでしたが、それらの傑物のさらに上司で90年代に社長を務める中邨さんの仕事観についても、「人生3割説」など印象的でした。

 曰く、人生は7割失敗、3割成功すれば抜群の成績だ、ただし、

 

 10打数の3安打ではなく、1000打数の300安打のことやで。…693本も空振りや凡打でアウトになっているというとや。もちろん出塁も297多いということやねんけどな。

 

 このエピソードは割と後半で語られているのですが、前半の各事業の展開についても通底しているのは、こういう思想に裏打ちされた中で、とにかく手数を尽くす、ということなんだろう、と思った次第です。 

*1:90年代のダウンタウンの番組でしばしば楽屋ネタで登場した、漫才ブーム以降、吉本興業が本格的な東京進出(=全国区化)を果たすことになる立役者