どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。
Googleの人材開発担当役員を辞めて起業したチャディー・メン・タンの「サーチ・インサイド・ユアセルフ」を読みました。副題は「仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法」。
タイトルから、もっと思索的、哲学的、考え方の本かと思っていましたが、それらの要素もなくはないものの、中心を占めるのは、本書の副題にある「マインドフルネス」を得るための「瞑想」の本でした。
サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法
- 作者: チャディー・メン・タン,ダニエル・ゴールマン(序文),一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート,柴田裕之
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2016/05/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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あるいは、より日本的な感覚でいえば、「禅」の本です。
禅は現代の日本語では「禅宗」や、その中心的な修養法である「座禅」のことを思い浮かべがちですが、本来は「禅那」「禅定」と訳される心の平穏状態を指す語なのだそうです。禅宗とはこの禅を重視する宗派であり、座禅はこの禅の境地に達するための方法の1つだ、と。
水の入った壺があって、底には澱(おり)がたくさんたまっている。その壺をたえず揺すっていたら、水は濁る。だが、揺するのをやめて床にそっと置いておけば、水は鎮まり、しばらくすると澱が全部底にたまり、水は透き通る。
(p.66)
よくは知りませんが、「ヨガ」とかもこういう思想に基づいているんでしょうかね。
本書が興味深いのは、この「マインドフル」な状態を手に入れるための瞑想について、元々Googleにエンジニアとして入社した、という世界でも屈指の、いわゆる「理系」の人がまとめている点です。
著者のタン氏は、元々、初期のGoogleにエンジニアとして就職し、かの有名な「20%ルール」の中で、各分野の専門家の助力を仰ぎながら、瞑想のカリキュラムを開発。本書のタイトルである「サーチ・インサイド・ユアセルフ」と命名された、このカリキュラムを実践するため、エンジニア職を離れて、能力開発担当のスタッフになったのだとか。
エンジニアが開発したエンジニア向けのカリキュラムであるため、心の動きとは、結局、脳の生体反応であり、呼吸や鼓動、発汗、筋収縮といった体の動きを観察し、整えることで、心の動きも整えることができる、そして、その能力は筋トレと同じように、訓練で鍛えることができる、という視点に基づいて、Googleのカリキュラムは構成され、その実践内容を、いわば「オープンソース」化したのが本書という位置づけです。
瞑想を多くの人にやってもらえるようにするには、科学の一分野にする必要がある。…(略)…瞑想同様、医療は大昔から実践されてきたが、19世紀以降…(略)…科学の一分野となってからは一変した。…(略)…医療は科学的になったとき、神秘的な要素がごっそり取り除かれた。
(p.335)
まあ、個人的には、わりと昔から、問題が発生しそうになったとき、一歩引いて自分を観察することで冷静な判断を手に入れる、という手法は、自己流でやっているので、納得できる部分と、もう少し鍛えられそうという手ごたえと、ただ、こういう繰り返しの鍛錬、というのは誰かに強制されないと自分一人ではやらなそう、という思いで読み終えた次第。うん、多分、やらなそう…。