Beerhouse³ 営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋やってます

店内BGMとしてアリかナシかギリギリのナシ(F)

 どうも。新潟県三条市の中心部(まんなか)、「本寺小路」(ほんじこうじ)でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか開業いたしました店主いけのです。

 

 自分の趣味の音楽を掛けたいけど妥協してBGMを選択していくギリギリの線を探すシリーズ、開店後のバタバタで間が開いてしまいましたが、第6回、F。

 妥協に妥協を重ねた店内BGMは既に、Aから始まってGまで行ってますけども。

 

 アメリカ・カリフォルニアに拠点を置く、インダストリアル・メタルの雄、Fear Factory、フィア・ファクトリー。


Fear Factory - Replica [OFFICIAL VIDEO]

 

 エレクトロニカ/テクノとハードコア・パンクの融合点として、1970年代末~80年代初頭には、既にノイズ/インダストリアル、という機械音をフィーチュアしたジャンルが存在していたということですが、1990年代中期には、Prodigy…は、ちょっと系統が違う気もしますが、Nine Inch Nailsマリリン・マンソンあたり、テクノとロックの中間としてのインダストリアル・ロックが、一般に認知されていたように記憶しています。

 あるいは、アル・ジューゲンセンのMinistryが一般にどの辺まで受け入れられていたかとか、テクノ側からのChemical BrothersAtari Teenage Riot等のビッグビート/デジタルハードコア系の状況などは、よく分からないのですが。

 

 そのような流れの中で、「恐怖の工場」というバンド名を掲げた、Fear Factoryは、機械的なビートを主体とする突撃系スラッシュ・メタル/デス・メタルに、効果的に電子音を導入し、歌詞やジャケット、ステージセットでのSF的な世界観によって、この1995年の2作目「Demanufacture」により、たった2枚のアルバムとリミックスEP1枚で、インダストリアル・メタルの1つの完成形を提示しました。

 ドラムもベースも人力のため、さすがにライヴだと、ビートのマシン感は後退し、より人間的なリズムとなりますが。

 

 1990年代は、グランジオルタナティヴ・ロックの台頭により、メタルが古臭い音楽とされた一方、こういうエレクトロニカや、ヒップホップの影響を受けながら、アメリカでは特にメロディよりもリズム、グルーヴを重視しながら、新しい形のメタルの可能性が模索された時代でした。

 

 ちなみに、Fear Factoryにはお蔵入りとなった1991年制作の第1作*1があるのですが、そのプロデュースを手掛けたのは、それらのグルーヴ・メタルの仕掛人となっていく、ロス・ロビンソンでした。

 実際に、デビュー作と本作を手掛けたのは、既にデスメタル界で一定の地位を確立していた、コリン・リチャードソン。もう少し、はっきりとメタル寄りのアプローチをとった、というのは彼の功績なのか、バンドやレーベル側がそれを希望して彼と組んだのか。

 こう書くと、第1作「Concrete」も改めて聴き直す必要があるように思います。

 

 Fear Factoryの特筆すべきもう1つの特徴は、ヴォーカルのバートン・C・ベルが1曲の中で、デス・グロウル(咆哮)と、クリーン・ヴォーカルを使い分けた点にあります。

 それまでのデスメタルでは、デス声一辺倒で押し通すことが一般的で、クリーン・ヴォーカルを挿入して、メロディを歌い上げることで、ヘヴィ・パートとメロディック・パートの変化をつける、という手法を効果的に取り入れたバンドは他になく、Fear Factoryの知名度を超えて、遥かに広く採用され、2000年前後のLinkin Parkなどへの成功につながった、と個人的には理解しています。本人たちは否定するかもしれませんが。

 21世紀初頭のUSメタル周辺では、より歌い分けを明確にするため、ツイン・ヴォーカルのバンドも珍しくありません。

 

 最後に、インダストリアル系の先駆者、Ministryによる「What About Us」、ハーレイ・ジョエル・オストメント主演映画「AI」挿入曲。


Ministry - What About Us

 

Demanufacture

Demanufacture

 

 

*1:後に、解散騒動が起きていた2002年に公式リリース。あんまり聞き込んでない