Beerhouse³ 営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋やってます

アニメ「ぼっち・ざ・ろっく」を見た

 ヘッダの絵は、AIお絵描き「TrinArt」先生に依頼しました。レスポールを弾いてるピンク髪の女子高生*1


 てことで、どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse³」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。

 

 2022年10-12月放送のアニメ、「ぼっち・ざ・ろっく」、放送開始後からSNSで言及されるのをちらちら見ていましたが、年末、2日くらいで一気見しました。各話約25分 × 12話 = 約5時間。

 

 「ギターを弾ければ明るい学園生活が始まるハズ」と信じて練習しつづけた結果、ネット上の動画配信では多数のフォロワーを抱えるものの、現実の学校では友達が一人もいないコミュ障の女子高生、後藤ひとり、通称ボッチが、バンド活動を始める話。

 

全体

 Wikipediaによると、2019年には既にアニメ化の企画が動いてた、ということだけれども、単純に製作に時間を要したのか、パンデミックの影響などを受けて2022年まで放送を待ったのかは分かりません。

 ただ、2022年後半、2020年の春から3年近くにわたって大打撃を受け、いよいよ完全復活が現実的に見えてきたライヴハウスを舞台にして音楽を扱うアニメが放送されることの意義、というのは大きいと思うんですよ。

 「けいおん」も音楽人口を広げたという話ですども*2、この作品のこれからの影響もちょっと期待したいところです。

 

ja.wikipedia.org

 

 

 音楽モノのアニメではあるのですが、特に序盤は決して音楽が中心にならず、前半の4話くらいは音楽モノのアニメというよりは、「下北沢のライブハウスが舞台の女子高生の日常モノ」という雰囲気で、音楽にそれほど興味がない層にも入ってもらって、音楽に興味を持ってもらう、という作り方になっていると感じました。

 最終話が楽器屋訪問回なのも、音楽ファン以外の視聴者を広く想定した上で、このアニメをキッカケに音楽やバンド、楽器に興味を持ったら怖がらずに挑戦してみてね、というメッセージなのかと思います。

 そして、この「自分の内面を支配する恐怖心に向き合って乗り越える」というのは、この作品を通貫するテーマで、音楽に興味がない人たちにも訴えることができる、普遍的なテーマ設定だと思います。

 

物語・作劇法

 全体の構成に関して感心したのは、まず、移り気な視聴者の興味をひきつけ、飽きずに見続けてもらうことが大変で、そのために色々と製作チームが腐心しているんだな、という点です。

 長らくテレビアニメを見ていないので(そもそも地デジ移行後、テレビ持ってないし)、最近のトレンドが分かりませんが、TikTokに代表される短時間動画コンテンツや、SNSの普及で、とにかく大量の情報が溢れる時代の作品、という印象です。

 

 自分はアベマの無料配信で見たのですが見た時点で、再生回数が第1話が150万で、2話以降30万前後。おそらく、その150万の何割かも第1話の最後まで見ていないと思うんですよね。見続けてもらう大変さ。

 

 その点で、ごく短い起承転結を繰り返して長い話に積み上げていく、という展開は、このザッピング時代に合ってるのかな、と思いました。

 原作未読なので、原作が4コマ漫画であることの影響がどのくらいあるのかは知りませんが、とにかく、ずっと4コマ的な短い展開によるリズム感。

 音楽で言えば、アルバムよりもシングル中心、そのシングルもCMソング的なキャッチーな15秒のサビだけをずっと組み合わせて1曲にしてる、みたいな。

 

 アバンタイトルが長い(OPタイトルが始まる前にストーリーがある程度進行する)のも印象的でしたが、これもおそらく、まずは興味を引き付けて、視聴者を世界観に引き込んで離さないための工夫なのかと思います。

 

 

 話に引き込む工夫という点では、登場人物の構成も、最終的には4人編成のバンドになるものの、まずは3人からシンプルに始める、というのも巧みな構成だと思いました。まずは、主人公とベーシスト、同じ陰キャでもタイプが違う2人を対比させつつ、リーダー気質のドラムが話を進める展開から始まり、3人のキャラクターを十分説明した上で、次に陽キャのヴォーカルが加入し、さらに第6話で先輩ミュージシャン登場、という整理がされている、のが印象的でした。

 これを、最初から陽キャや先輩ベーシストを出すと、キャラクターの役割が被る部分が出て、個性が分かりづらくなってしまうと思うんですよ。

 

 

 話に引き込み、視聴者の共感を呼ぶ工夫で、もう1つ。

 普通、動画作品は3人称視点で描かれることが多いのですが、この作品はコミュ障の主人公の独白が多いのも特徴的だと思いました。

 動画作品の視聴者は画面越しに、あくまで第3者として物語を外から眺めるので、普通、独白が多いと話が説明的になりすぎてウザいのですが、この作品では、主人公がコミュ障で独り言が多い(脳内の妄想が溢れてくる)、という設定によりムリなく独白を使えているのだと思います。

 

 

音楽

 普遍的なテーマを描き、音楽はあくまで素材として使われているだけ、とは言え、音楽がないがしろにされているか、というと、決してそんなことはない。製作チームの音楽に対する力の入れ方は随所に感じられました。

 ストーリーの上でも演奏シーンは効果的に使われており、特にクライマックスでのライヴは圧巻(いったん音楽から離れた文化祭を描いて、ライヴの前に「タメ」を作る構成!)。

 

 ライヴシーン以外でも、ちょっとした音のリアリティにスタッフの意気込みを感じる。たとえば、楽器をアンプにつないだときとか、演奏を始める直前に楽器を構えなおす音とか、そういうちょっとした音。

 

 ちなみに自分はPCのスピーカを鳴らしてなくて、常にベイヤーダイナミックのDT990から音を聴いているのですが、音楽好きの皆さんは是非、ヘッドフォンやご自慢の再生環境につないで見直してみてください。

 

※アフィリンク貼ってみたものの、アマだとDT990、高いのね…Soundhouseさんとかだともうちょい安いと思いますが…ワシは昔ヨドで買ったが…

 

 

 まあ、音楽好きなら誰でも肯定的に受け止められるか、というと、たとえば、登場人物の名前とか各話サブタイトルから、アジアン・カンフー・ジェネレーションを即座に想起できるくらい大好きな人とか、逆に、あの界隈にちょっと否定的な立場の人が見ると、そのコダワリから、またどう思うのかは知りませんが。

 ちなみに、アジカン、ググったらメンバー2人が76年生まれの学年で一浪、2人が77年生まれでガチ同世代じゃねぇか。世の中に出てきたタイミング的に、もうちょい若いのかと思ってたぜ。

ja.wikipedia.org

 

 

 90年代後半から00年前後にかけて、ああいうタイプの音楽を好きだった人たちか、と想像できるな。

 いやあ、自分はその頃、音楽好きは音楽好きでも、既にどっぷりとスウェーデン産メロディック・デスを聴いていたのですよね。

 なので、週1以上で渋谷のタワレコを筆頭に、街に出たら、とりあえず特に用もないのにレコード屋には寄る生活をしていたのだけど、「ロッキングオン」とか立ち読みはしても「全然わからん」と思っていたし、「~ジャパン」に至っては読んだこともない。

 下北沢には結局、東京に6年住んでて1回も近づくこともなかったのですよ。下北沢シェルターに至っては、有名ライヴハウスでもちろん名前は知ってるけど、いまだに一度も行ったことがない……。自分が楽器やってればライヴハウスにも出入りしたのかもですが、聴くだけなので……。

 

 なお、その後、下北沢自体はビールを飲むようになったので行ったことあります。ビールを飲みに行ったりとか、ビールを飲みに行ったりとか。あと、街づくり的な観点でB&Bさんとか。結局、ビール…。

 

 

 話を戻して作品の音楽へのコダワリで言うと、演奏シーンの作画とかも無理がない自然なフォームになっていて、これは実際に楽器を持って演奏したのを取り込んで作画しているらしいです。

 それらの人物がマンガ的な2次元の表現なのに、背景は柔らかい光と立体感でリアルな雰囲気なのも特徴的だなと思いました。

 

 

 OP/EDや劇中歌の他、作品の方向性を共有するために作られた楽曲も含んだアルバムが出ています。

 

 また、Spotifyではソニー公式から各話サブタイトルのネタモトになったアジカン楽曲プレイリストも。

*1:髪と服をピンクに指定したハズがギターもピンクになった。なお、Carcassのビル・スティアー先生の画像をネットで拾ってきてimg2imgしたのは内緒。サラサラ長髪ストレートのレスポール使いって他に誰かいますか? ザック?

*2:未見