Beerhouse3営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋はじめました

谷口功一/スナック研究会編著「スナック研究序説 日本の夜の公共圏」を読む

 どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。

 

 一度、結構、長く書いて、後は読み直してヘンじゃなきゃ公開…と思って置いてたらサーバエラーか何かで全部、消えていた…。記憶をたどって、さくっと…。

 

 というわけで、年末にこの本を読みました。副題が「日本の夜の公共圏」ということで、一応、読んでおかねば、と。

   

日本の夜の公共圏:スナック研究序説

日本の夜の公共圏:スナック研究序説

 

 

 ただ、副題からはレイ・オルデンバーグの「サードプレイス」的な話かと思いましたが、ちょっと違ってました。公共空間としての飲食店を論じるにしては、社会学民俗学的な要素は薄く。 

 

 編者で研究会主宰者の谷口氏が首都大学東京法哲学の研究者ということで、他のメンバーも法学系の色が強く、特に、1964年の東京オリンピック以降の風営法*1とスナックの関係性に力点が置かれているように読みました。

 もちろん、風営法の規制の間を抜けて、バーやクラブでもなく、一般食堂でもない、ゆるやかな営業形態としてのスナック、というのは法的な側面から立ち位置を押さえておく必要はあると思いますが。

 なにぶん、当方は行政職員出身の飲食店経営者で、この辺りは知っている話も多く。

 

 第1章の高山氏が本居宣長などを引いて、知識だけでは不十分で、人情に通ずること、粋、という視点からスナックの重要性を論じているのですが、その点に立てば、本書は、いささか法的な制度の話に寄りすぎ、そこで働く人や集まる人たちの心の動きについての言及が足りないのではないか、と。  

 もっとも、帯に「『スナック』についての本邦初の学術的研究」と謳い、また編集後記で編者が「あえて『学術的』ということを強調したのには、スナックを含む水商売を軽く見る向きへの私の中の反発心があり」と記しているように、今回は初回ということもあって、なるべく堅い話に焦点を当てたかったのかもしれません。

 オルデンバーグの「サードプレイス」にしても、学術的な論文というよりは、エッセイに近い部分もありますし。

 

 感情的な側面と学術性の両立という点では、第6章で河野氏が、日本の近代化と西洋的な社交文化を受容していく中で、「酒と女」の扱いに失敗したことを指摘し、それを補完する場としてのスナック論を展開するあたりは、なかなか興味深く読みました。

 また、第8章で荒井氏がスナックの立地を分析し、繁華街のスナックと地方の集落にあるスナックの違いを紐解くのも興味深い論考でした。

 

 研究会は立ち上がったばかり、ということで、今後のさらなる深耕を期待したいところです。

 個人的には、比較対象として、ガールズバーやキャバクラ、(往時の)喫茶店と(近年の)カフェ、あるいは赤ちょうちんや小料理屋あたりについても焦点を当て、スナックと何が共通し、何が異なるかを見ることから、スナックの特殊性が浮かび上がってくるのでは、とも思いました。

 

 なお、本書の主題とはあまり関係ありませんが、公共空間あるいは公共性について考えるに当たって、ハーバーマスとかアーレントとかは読んどかなくちゃいけないんですかねぇ、と改めて思ったり(読むとは言ってない)。

 

公共性の構造転換―市民社会の一カテゴリーについての探究

公共性の構造転換―市民社会の一カテゴリーについての探究

 

 

人間の条件 (ちくま学芸文庫)

人間の条件 (ちくま学芸文庫)

 

*1:かつての「風俗営業等取締法」から1984年に「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に名称変更されたので「風適法」とも呼ぶらしい