どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。
言わないと忘れられがちなので、たまに言っておきますが(忘れていただいても一向、構いませんが)、前職は市役所職員で、最後の部署は、高齢化社会の中での健康施策という観点から都市利用を考える、みたいなことをやってました。
てな話の延長線上で、馬場さんほかの「エリア・リノベーション」(2016)読みました。
- 作者: 馬場正尊,Open A,嶋田洋平,倉石智典,明石卓巳,豊田雅子,小山隆輝,加藤寛之
- 出版社/メーカー: 学芸出版社
- 発売日: 2016/05/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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今や、地方都市の活性化を語る上で、リノベーションは切り離せない単語となっていますが、馬場さんは、その「リノベーション」って単語を最初期に広めた一人であり、リノベーションの象徴的な活動である東京R不動産の立ち上げにも関わった人です。
リノベーション、単なるリフォーム≒古い物件の改修ではなく、古い建物の味わいは活かしつつ、用途を含めてガラっと変え、インパクトを与える。
馬場さんの前作「都市をリノベーション」(2011)では、建物のリノベーションを中心に扱う中で、その背景や延長の可能性としての都市とのかかわり、という視点で語られていたのに対し、本書は、エリア全体をどう変えていくか、という視点で書かれています。
また、本書の特徴としては、馬場さんが関わった神田・日本橋の他、岡山、大阪、尾道、長野、小倉の各エリアについて、キーパーソンにも同一の視点から取材、執筆依頼し、各エリアでの成功に至る共通項を探っています。
民間がエリアをまるごと変えていくのはハードルが高いし、まずは具体的に一棟、変えてみる方が大事なことは、本書を通じても感じられます。
その際、具体的に建物をどうしていくか、という点からは、本書よりは前作の方が有用かもしれません。
一方、どのエリアを選び、その中のどの建物を選び、その建物を起点として、将来をどう構想するか、そのための拡張性をどのように埋め込んでおくか、といった視点をあらかじめ一棟目に着手するときから、ざっくりとは考えていた方が成功確率は高いように思います。
単純な成長時代とは違って計画的な都市開発が難しい時代に、まずやってみる機動力や、目の前の現実が予想と違ったときの対応の柔軟さは必要ですが、それと同時に、一定の計画性というものも持っていた方が、物事は効果的に進むだろう、と思うのです。理工学部出身者としては。
そういう、自分(たち)がこれから着手する一棟のリノベーションは、将来、そのエリアにどんな変化を及ぼすのか、及ぼせたら成功と言えるのか、といった全体をぼんやりとでも構想する上では、大変、役に立つ視点が散りばめられた一冊、と感じました。
そういえば、「公共空間のリノベーション」(2013)は買ったときにさらっと読んだまま、深く読み込んでない…けども、公共空間に関わることは、しばらくなさそうだしな…。