Beerhouse³ 営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋やってます

馬場正尊ほか「エリアリノベーション」を読む

 どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。

 

 言わないと忘れられがちなので、たまに言っておきますが(忘れていただいても一向、構いませんが)、前職は市役所職員で、最後の部署は、高齢化社会の中での健康施策という観点から都市利用を考える、みたいなことをやってました。

 

 てな話の延長線上で、馬場さんほかの「エリア・リノベーション」(2016)読みました。

 

エリアリノベーション:変化の構造とローカライズ

エリアリノベーション:変化の構造とローカライズ

 

 

 

 今や、地方都市の活性化を語る上で、リノベーションは切り離せない単語となっていますが、馬場さんは、その「リノベーション」って単語を最初期に広めた一人であり、リノベーションの象徴的な活動である東京R不動産の立ち上げにも関わった人です。

 リノベーション、単なるリフォーム≒古い物件の改修ではなく、古い建物の味わいは活かしつつ、用途を含めてガラっと変え、インパクトを与える。

 

 馬場さんの前作「都市をリノベーション」(2011)では、建物のリノベーションを中心に扱う中で、その背景や延長の可能性としての都市とのかかわり、という視点で語られていたのに対し、本書は、エリア全体をどう変えていくか、という視点で書かれています。

 

都市をリノベーション

都市をリノベーション

 

 

 また、本書の特徴としては、馬場さんが関わった神田・日本橋の他、岡山、大阪、尾道、長野、小倉の各エリアについて、キーパーソンにも同一の視点から取材、執筆依頼し、各エリアでの成功に至る共通項を探っています。

 

 民間がエリアをまるごと変えていくのはハードルが高いし、まずは具体的に一棟、変えてみる方が大事なことは、本書を通じても感じられます。

 その際、具体的に建物をどうしていくか、という点からは、本書よりは前作の方が有用かもしれません。

 

 一方、どのエリアを選び、その中のどの建物を選び、その建物を起点として、将来をどう構想するか、そのための拡張性をどのように埋め込んでおくか、といった視点をあらかじめ一棟目に着手するときから、ざっくりとは考えていた方が成功確率は高いように思います。

 単純な成長時代とは違って計画的な都市開発が難しい時代に、まずやってみる機動力や、目の前の現実が予想と違ったときの対応の柔軟さは必要ですが、それと同時に、一定の計画性というものも持っていた方が、物事は効果的に進むだろう、と思うのです。理工学部出身者としては。

 

 そういう、自分(たち)がこれから着手する一棟のリノベーションは、将来、そのエリアにどんな変化を及ぼすのか、及ぼせたら成功と言えるのか、といった全体をぼんやりとでも構想する上では、大変、役に立つ視点が散りばめられた一冊、と感じました。

 

 そういえば、「公共空間のリノベーション」(2013)は買ったときにさらっと読んだまま、深く読み込んでない…けども、公共空間に関わることは、しばらくなさそうだしな…。

 

RePUBLIC 公共空間のリノベーション

RePUBLIC 公共空間のリノベーション