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Beerhouse3営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋はじめました

なぜ地方都市は観光に取り組んだほうがよいのか

地域経済 地方都市

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 どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか開業いたしました店主いけのです。

 

 こないだ小布施町の記事を書いてる途中で、書こうと思った話なんですけれど、長くなりそうなので、稿を分けて。

 

beerhousecubed.hatenablog.com

 

 

 観光、と言うと、1970年代後半の地方都市生まれとしては、ハワイとか熱海とか草津とか、そういうイメージが思い浮かぶ訳です。

 ですが、いけの個人は、恐ろしいことに、この3か所、いずれも行ったことがない。ははは。

 

 そして、ここで地方都市が取り組むべき、と言っている観光とは、そういうことではない。

 大型バスに乗って、百人以上入る大食堂に詰め込まれて、弁当を食べて、大浴場付きの温泉旅館に泊まって、だとか、じいちゃんばあちゃん含めた大家族で、個室温泉付の和室に泊まって、とか、そういうことではない。

 

 では、どういう観光か、はとりあえず後回しにして、本題の「なぜ、観光が必要なのか」。

 

 なぜなら地方都市の最大の課題は、若い人が定着しないからで、それには働く場所が必要で、そのためには彼らが稼げる職業が必要だからですよ。

 だからと言って、巨大ホテルを誘致しましょう、観光リゾート開発をしましょう、カジノをおっ建てましょう、国際会議場ぶっ建ててMICEですね、施設運営のために雇用が生まれますね、とかいう話ではない。

 

 仕事をつくるには、売上(あるいは利益)が必要です。共産主義社会じゃないのだから。

 1つには、イオンやツタヤやAmazonサイゼリヤマクドナルドやスターバックスコメダ珈琲ではなく、地元の店で金を使いましょう、という話になる訳です。なるべく地域内の閉じた世界でお金を効率よく循環させましょう、と。

 ただ、じゃあ、商店街の専門店に並んでる商品のうち、一体どれだけ地元で生産されたものがあるのか。

 たとえば、三条市には海がないので、魚1つ食べようにも、一部の川魚以外、すべて市外から買う必要がある訳です。

 あるいは、牛や豚を飼育されている畜産農家の方がどの程度いらっしゃるか不明ですが、これもやはり多くの場合、輸送費を考えても、市外、あるいは県外、海外から仕入れた方が安価に高品質のものを手に入れられる場合が多い。

 当店のビールだって、三条市内には1軒も醸造所がないので、すべて市外から買わせていただいておりますし。

 

 外からモノを買うことは否定できない。江戸時代じゃあるまいし。

 

 そして、外からモノを買ってくるには、その分を外から稼ぐ必要がある訳です。要するに、貿易という概念を、今、改めて都市単位で考える必要がある。

 

 もちろん、民間の経済活動を通じて外貨を獲得しなくても、国が分配する補助金交付金、あるいは年金、医療保険生活保護といった社会保障費を通じて、地方にお金は落ちてきます。

 だけど、それって、あんまり明るい話じゃないし、国家財政という、今や、とっても不確かな存在に依存していてよいのか、という。

 

 なので、民間の経済活動を通じて、外貨を稼ぐ必要がある。

 1つには、外にモノやサービスを売ることを通じて。もう1つは、外の人に来てもらうことを通じて。

 

 後者が、いわば広義の観光、なのだけれど、本筋は前者だと、いけのは考えます。

 だけれども、モノ(やサービス)を売ることと、これからの観光はリンクするのではないか、という考えです。

 

 たとえば、1つには、埼玉県のどこかの神社や、茨城県のどこかの街が、アニメの舞台となったことで、「聖地巡礼」のような感じで、多くの観光客が訪れた、とか。

 それこそ、某・日本刀ゲームがブレイクしたことで、その中に、「三条小鍛冶宗近」の「三日月宗近」が登場することから*1、「三条鍛冶道場」さんにも、それなりに県外から鍛冶体験にくる訪問者がいるらしいですよ。

 まあ、宗近は京都の三条なので、三条鍛冶道場は完全な便乗なんですけれども。

三条宗近 - Wikipedia

三条鍛冶道場 (施設のあらまし) - 三条市

 

 あるいはクラフトビールの世界においても、いけのも昨年9月にロンドンでいくつかのブルワリーは回って来ましたし、クラフトビアパブにも訪れて、次はサンディエゴポートランドも行ってみたいぞ、とか思う訳です。

 で、これも、いけのが極端に変かと言うと、クラフトビール好きな人では、国内なら結構、みなさん出かけておられて、海外でも出張のついでとかに結構、やっている人はいるようです。

 

 何か商品やサービスがブレイクすれば、何もなかった街でも、その商品やサービスが広告塔となって、人が訪れ、金を落とすようになる。

 

 だけれども、これも何かブレイクした商品があって、その副次的な効果としての観光であって、そもそも狙って人を集められるものではない。

 せいぜい能動的に狙ってできることは、何かがブレイクし、訪問者が増えたときに、しっかりと対応をして、来訪者をがっかりさせない、ということくらい。

 

 それでも、地方都市は観光に取り組むべきだし、それをモノ(やサービス)を外に売ることと結びつけていくべきだと考える訳です。

 

 なぜならば、優れたモノ(やサービス)が売れた後、ではなく、その前、優れたモノを作って外に売っていくためには、まず、地域の外に住む人たちの力が必要だからです。

 そりゃ、地元の人間だけが集まって、いいものを作れるなら苦労しないですよ。もちろん、地域外の人間を「地域外から来た」という理由だけで、礼賛すべきでもない。

 ただ、単純に確率論の問題として、できるだけ枠を広げて、いろんな可能性に接した方が、優れたモノ(やサービス)を開発できる可能性は高い。そして、少なくとも、日本の場合、東京の方が圧倒的に人口が多いし、色々な情報の集積度も高いのだから、外に開いて、手伝ってくれる人間を探すべき。

 広く可能性を募った結果、意外と地元にいいヤツがいた、地元の人間の方がコミュニケーションが密にできてクオリティが上がった。それはそれで素晴らしいことですが、外側にある可能性を閉ざすべきではない。

 

 だから、地方都市は、まずは地域の外の人たちに、自分たちの存在を知ってもらい、どういう資源があるかを知ってもらう必要がある。

 そのときに一番、手っ取り早い方法が、観光なのではないか、という仮説。

 

 いや、だから、温泉まんじゅう食って帰るような、あまりにも非日常な観光では、普段の我々の暮らしから遠すぎて、全然、産業につながらないと思いますが。

 

 そうではなくて、生活者としての我々の息遣いが聞こえてくるような、我々の日常を体験していただけるような観光に取り組めるとよい。我々にどんな可能性があり、どういう課題があるか、我々が気付いていること、いまだ気付いていないことをリアルに観察していただけるような観光。

 

 仕事として依頼をして、分析に来ていただくことも大事ですが、まずはふらっと気楽に、あくまで観光として来ていただいて、何か引っかかるものがあったときに、そこから次の段階に進んでいければよいのかな、と思う次第。

 もちろん、あまりにも気楽な、単なる観光だけだと、次につなげる、という仕組みが中々、難しいところだとは思うのですが。

 

 まあ、少なくとも、いけのが「工場の祭典」をタダフサさん、メソッドさんと一緒に企画したときには、そういうコンセプトで企画したつもりです。

 

開け、工場! 工場の祭典 - Factory Festival

www.tadafusa.com

method

 

 「燕三条工場の祭典」、今年は10月6日(木)から9日(日)までの4日間の開催を予定しているそうです。10日(月)はハッピーマンデーで連休ですので、今年は長期間の滞在が可能な方も多そうですね。

 皆様のお越しをお待ちしております。

 

 …とか言って、実は、色々と事情があって、期間中、当店が店として営業しているかは、実ははなはだ怪しいのですが…

 

 さらに、これだけ外との商売が大事、とか言っておきながら、今、読み始めた本は、地域内経済循環の重要性を説く、「スモールマート革命」だったりする。

スモールマート革命 -持続可能な地域経済活性化への挑戦-

スモールマート革命 -持続可能な地域経済活性化への挑戦-

 

 

 なお、冒頭の写真は、当市で小正月に開催される「献灯祭」の模様でした。地元民は当たり前に知っているけど特に推してもいなくて観光地化されていない風習、の例ということで。

献灯祭 (1月14日) - 三条市

 

*1:いまや「三日月宗近」で検索すると2次元絵しか出てこないんすね、、、