どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse3」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。
高校時代から早稲田の商店街で活性化活動に従事し、30代にしてキャリア20年という木下斉(ひとし)さんの小説仕立ての最新著作、読みました。
個人的には、文末に掲出したような木下さんの著作は何冊か前職在籍時から目を通しており、また東洋経済オンラインはじめ、ネットでの記事もちょいちょい読んでいるため、地域再生に関するノウハウとしては、特に目新しいものはなく。
逆に言えば、木下さんの言説を読むたびに毎度、思うことですが、彼や彼の周辺のリアルな活動実績に基づき、確固たる信念のもとで、そのノウハウを披露しているので、バズワードを並べ立てるだけの薄っぺらいエセ・コンサルや偉い先生がたとは説得力が違います。
過去の著作との最大の相違は何よりも、小説仕立てである点で、タイトルどおり、衰退する地元に危機感を覚えつつも、何から手を付ければいいか分からない、ごく普通の主人公を通して、同じような境遇にいる読者を鼓舞する姿勢で物語が進む点と言えましょう。
最近、改めてダニング・クルーガー効果について考えを及ぼしているところですが、日本人は優秀な人ほど、その謙虚さゆえに自信を無くしてしまいがちなので、この一貫した姿勢に勇気づけられる読者は多いのではないでしょうか。
個人的に印象に残ったのは、終盤、事業が軌道に乗ってきたところで様々な批判、あるいは誹謗・中傷を受けるようになり、改めて何のための事業だったかを問い直すところです。
何のための事業なのか、どうなったら成功なのか、事業の目的、ゴール、志、あるいは前職でお世話になった某社長はそれを「夢」と呼んでいましたが、おそらく普通の人は、本書のように、事業をやっていく中で様々な機会を経て、それらを再三考え、明確にしていくのだと思いますが、これはできれば最初から考えておいた方がよいと思うところです。もちろん一度考えたところで、折を見て何度も見直しながら、確度を高めていくのだと思いますが。
地元のための活動は、それが確実な手ごたえがあるものほど、反対されるものだと思います。
地元がよくなるために何をすればよいのか、みんなが理解していたら、そもそも地元は衰退していない訳で。
論理的に突き詰めて考えた最良の答えだったとしても、それが伝わり、理解され、支持されるには時間がかかるものだと思います。あるいは事業の有効性を理解すればこそ、妬み、ひがみ、地位を脅かされる不安、そういうネガティヴな感情で素直には支持できないのが人間という生き物です。
そのときに心が折れずにやり抜くには、自分が何のために活動しているか、という目的を見失わないことが大事だと思うのです。
しかし、こういう地域課題系の話を聞くたびに思い出すのは、トールキンの「指輪物語」でガンダルフがフロド・バギンズに説く、能力があるから世界に対して責任を背負う訳ではなく、偶然、そのときそこにいた人間が大きな課題に対して1つ1つの役割を背負うのだ、という話です。 今、手元にないんで詳細、忘れましたが。
- 作者: J.R.R.トールキン,瀬田貞二,田中明子
- 出版社/メーカー: 評論社
- 発売日: 2005/12/01
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 28回
- この商品を含むブログ (23件) を見る
地域課題も課題に気付いた人間が動くしかないのでしょう。
もう少しロジカルに各種事業の有効性など考えたい方は、木下さんの過去の著作も有用かと思われます。
稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則 (NHK出版新書)
- 作者: 木下斉
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2015/05/08
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (12件) を見る