Beerhouse³ 営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋やってます

飲食店でクレジットカードを使っても大丈夫なんですか、という話


クレジットカードを使っても店には悪影響はないか、という話。

 

まあ、うちの場合は、使ってもらっても構わないので導入してる訳ですけど。

 

ただ、そこは世の中の流れ的に導入してみたけど、本音ではなるべく使ってほしくないってお店や、時間帯や金額など、個々のケースによる、というお店もあるかもしれませんね。

 

 

てことで、こんにちは、新潟県三条市クラフトビールの店をやってる、いけのです。

 

 

コロナ禍を経て、クレカやQRコードなどの各種電子決済を使う人が増えてきた感じもあり、ご質問いただく場合も出てきたので考え方の整理。

 

お店やってる人でクレカ入れるか考えてる人にも参考になるかもしれません。

 

クレジットカードによる店側のデメリット

(1)決済手数料の支払い

クレジットカードを使いたい理由で「ポイントが貯まるから」と言う人がいるんですけど、まあ、正直、あんまりいい気はしないですよね、そのポイントの原資はウチがカード会社に支払う手数料から生まれているので。

 

つまり、単純に、強制的に値引きさせられているんですよね。

 

しかも、大抵は、クレカ会社との約款で現金支払の客とクレカ支払の客を差別するな、と書かれているので手数料分の上乗せを消費者に求めることも禁止されているんですよ。自分たちはポイント還元とかで消費者を差別しているクセにね。

 

ちなみに2023年7月現在では、クレカの手数料(会社により差がある)よりは、PayPayの方が若干安いですけど、PayPayが他社締め出しに掛かっているので、今後はどうでしょうね。

 

 

(2)キャッシュフローの悪化

飲食店に限らず個人店は現金商売の自転車操業が基本で、極端な話、今日の売上が明日の仕入れ代金になる訳です。

 

ところがクレカ払いだと、入金が遅れる。ウチは複数サービス使ってるので、早いもので月3回締日の5日後払い、長いものは末日締翌月末払い。

 

事業経営において預金残高とは、すなわち今すぐ打てる選択肢の多さなんですよね。銀行に入金されるまで、それは自分たちのお金ではなく、自由には使えないので。キャッシュ・イズ・キング。

 

まあ、多少は手持ち現金あるので、そう困らないけれど。とはいえ、パンデミックのこの3年はじりじりと預金残高も減ってる日々で、中々、精神的にはキツい日があったのは事実です。

 

 

(3)機器回り

既に導入済のウチとかでは問題ないですし、PayPayならQRのシール1枚貰えば済みますけど、クレジットカード決済をこれから導入しようとするお店さんだと機材の用意も必要ですよね。

Airペイはしょっちゅう無料で端末配布キャンペーンやってますが。

 

新規導入のお店さんだと機器操作とかも覚える必要がありますね。返金対応とか。クレカでの返金はウチもやったことがないんで、やるとなると結構、バタバタすると思います。

ただ、ウチは元々、Airレジ使っててiPad使ってましたし、何なら店にノートPCもあるので、それらでFAQ見ながら操作すればいいのですが、機械に不慣れな人だと、その辺の処理は、現金と違ってちょっとしたパニックになるかもしれません。

 

あと1回、週末なのにAirレジのサーバが落ちてアクセスできない、という日がありました。だと当然、クレカも使えなくなる。たまたま、そんなに混んでない時間帯のうちに復旧しましたが。

 

機械操作に不慣れな人だと、払ったフリをして払ってない人間を見逃すとかってことも

あるかもしれません。PayPayでは一時事件化して、対策が整備されてきましたけど。

 

 

まあ、以上のようなデメリットがある一方、以下のようなメリットが上回るだろう、と考えてウチは導入しているので、その辺の判断をするのが、まさに「経営」だろうと思います。

 

クレジットカードによる店側のメリット

(1)単純に消費者への利便性向上

店にメリットは特にないんだけど、最近は徐々に現金を持ち歩かない人が増えてるので、使えたら皆さん、便利ですよね、という。顧客サービス。

 

まあ、店側のメリットと言えば、昔、カード導入以前の話ですけど、他の店でさんざん飲んできた2人組の1人がカバンにしまったサイフを見つけられない、もう1人はカードなら持ってるけど現金の持ち合わせが2人分には足りない、ので次来たときのツケとして帰させたら、いつまで経っても払いに来ない、後日やっと来たと思ったら、酔いすぎていて、あのとき支払をどうしたか完全に忘れていた、ということがありました。

 

現金持ち合わせが足りない場合に、確実に支払ってもらえる、というのは機会は多くないけどメリットとしてはあるかもしれません。

 

 

(2)支払単価が増える

上とも関連しますが、カードだと現金よりも気が大きくなりがち、という搾取的な話ではなくて*1、単純に持ち合わせが少ないから今日はヤメておこうかと思ったけど、カードが使えるならもう1杯飲める、みたいなことはあると思います。

 

特に本寺小路界隈だと昔からコンビニがないので夜になるとATMが使えない、という事情があったので。

 

これもカード導入以前の話ですが、訪問営業に来たカード会社の人が、「持ち合わせが足りないけど、もう少し飲みたいとき、あそこならカードが使えるから、という理由で来店者増につながります」と営業していきましたが、それはあんまりないんじゃないですかね。

 

というか、うちは値段とか利便性とかで勝負してないので、そういう消極的な理由(どこでもいいけど、あそこの方が便利)で選ばれてる時点で負けなので。

 

 

(3)現金取扱による事故防止/コスト削減

うちは毎日、売上現金と釣銭を確認して翌日銀行に売上を入金しているのですが、クレカ導入以来、たまに全額電子決済で現金売上がゼロ、つまり、この作業がゼロの日があります。

時間にして数分ですが、その分の自分の時給と、クレカ会社への支払手数料とどっちが高いか、ということですね。

 

特に店を閉めて疲れ切ってるときの現金計算とか、まあ、合わずに何度もやり直す日とか普通にあるので。

 

完全に電子決済移行して現金ゼロという時代は中々、来ないので結局、現金を扱うことは完全になくなりはしないと思うんですが。

 

ちなみに、うちは毎日、売上の確認と入金してるので、ウチに空き巣や強盗が入るのは元々、リスクのわりにあまりにもローリターンすぎるのでヤメといた方がいいと思うんですけど、これが日々の売上がもっと多い業態であれば、クレカに切り替えた方が店に置いておく現金を減らせることで、安全性を高められますよね。

 

 

で、これ、ウチはワンオペですけど、人を使っている場合、スタッフに現金を触らせるよりは、クレカにしといた方が、お互い精神的な負担を減らせる、というのはあると思います。

 

 

(4)販売情報管理

うちは元々、Airレジを会計ソフトと連動させてるので関係ないですけど、現金での売上を紙とペンで管理してる人にとっては電子決済導入することで、その辺が自動的に集計されるようになるので便利かもしれません。

 

え? 自動的に会計情報が集計、管理されたら困る人もいるだろって? いや、何を言ってるのか意味が分かりません。

 

 

結論: なのでウチでは使ってどうぞ

こちらからは以上です。

 

うちの場合は特にデメリット1の手数料と、メリット3の現金取扱コストの比較で決めてるところが大きいです。ので、今後、手数料の変動によっては、取り扱いを停止する場合もあります。今のところは、メリット3が大きくなっていくんじゃないかと印象ですが。

 

また、冒頭にも書いたとおり、その辺のバランスがどこで取れるかは、業態や規模、経営方針などによるところだと思いますが、それを考えるのが、まさに「経営」なので、顧客の側はあんまり気にする必要もないかと思う次第です。

 

「経営」に失敗した店は潰れて市場から消えるだけです。

 

え? 潰れてもらったら困る? それは、そのお店をたくさん使うことで、カード手数料以上の利益をそのお店に落とせばいいんじゃないですかね。

 

 

追伸

ところで記事の本文はここで終わりなのですが、2023年6月末から、はてなブログにもnoteのような課金機能が設定された、ということで以下に試験的に有料部分を設けます。

 

ここまでのこの記事に金払ってやるよ、という場合はポチってください(本当は金額決めずに投げ銭にしようと思ったら今のところ投げ銭機能はないみたいです)。有料部分に読むべき情報はありません。

 

今後、月額固定のサブスクなどで記事を更新していくこともあるかもしれません。

*1:人間は何かを得る喜びよりも失う悲しみの方が強いので、目の前で現金が財布から出ていく、という経験をするとせっかくの飲食店で幸福な体験が台無しになる、という研究があるらしいです

この続きはcodocで購入