Beerhouse³ 営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋やってます

鉄と鋼


どうも、新潟県三条市でビール屋やってる、いけのです。ビール屋ですが、4月から日中、別の仕事もやってます。

 

で、その別の仕事で、使う自分用メモ。

三条の鍛冶職人さんたちの間では、「鉄」(iron、あるいはナマ)と「鋼」(steel)は別の材料と認識されているのだけど、一般の人はその違いを認識していないと思います。さて、その違いをどのように説明したら、伝わりやすいかというマトメ。

 

鉄とは何か

まず、鉄について説明しましょう。鉄は、元素記号Feで表される元素で、地球の地殻に多く存在します*1

 

ここで言う鉄、というか世の中で鉄と呼ばれる材料は決して純物質のFeではないのですが、鋼に比べれば、炭素の含有量が少ない材料です。炭素の含有量が少ないことで、比較的柔らかく、加工しやすいことが特性として挙げられます。また、熱処理を行っても硬化しません。

 

三条の鍛冶職人たちは、鉄を「ナマ」とも呼びます*2

 

 

鋼とは何か

鋼も鉄を基にした材料ですが、炭素含有量がおおむね0.4%から1.4%の範囲で含まれています。この炭素含有量の違いが、鉄と鋼の性質を大きく変えています。鋼は鉄に比べて硬く、強度が高いため、より耐久性のある製品を作ることができます。

 

地球上の鉄は、おおむね錆びた、つまり酸素と結びついた酸化鉄として存在しますが、これを利用するためには還元、つまり酸素を除去する必要があります。過去、人類の製鉄の歴史の中では木炭や石炭を利用して高温を得ることで、炭素と酸素を結合させて還元を行ってきました*3。このとき、一部の炭素が鉄に混入(浸炭)するのです。

 

鋼のもう一つの特徴は、熱処理によってさらに硬化できることです。このプロセスを「焼入れ」と呼びます。焼入れを行うことで、鋼は非常に硬く、耐摩耗性が向上します。この特性が、鋼を刃物や工具、機械部品などの製造に適した材料としています。

 

炭素は鉛筆の芯である黒鉛の材料でもありますが、ダイヤモンド、つまり地球上で最も硬い物質も炭素で出来ています。鋼は焼入れによって鉄の中に溶け込んだ炭素がダイヤモンドに近い構造を取るようです。

 

 

日本の伝統的な刃物文化と鍛接

日本の伝統的な刃物文化では、鍛接(たんせつ)と言って、硬さの異なる鉄と鋼*4を高温に加熱した上で叩いて、くっつけることで刃物の材料にします。

 

西洋では、少なくとも近代の高炉による鉄鋼生産開始以降は、1種類の鋼だけで刃物を作ることが一般的ですが、日本の伝統的な刃物文化では、鍛接を用います。鉄は柔らかく、衝撃を吸収しやすい特性があります。一方、鋼は硬く、耐摩耗性に優れています。この組み合わせにより、耐久性と切れ味、さらに研ぎやすさを兼ね備えた刃物を作ることができるのです。それに対して、西洋の刃物は、鋼の硬さを追求すれば脆く欠けやすい刃物になり、耐久性を追求すれば切れ味の劣る刃物にせざるを得ません。

 

日本では伝統的な、いわゆる「たたら製鉄」を行うと、部位によって炭素量の異なる鋼の塊が生み出されました。これを硬さの違いを利用して小さく砕いて選り分け、炭素量の少ない柔らかい材料と、炭素量の多い硬い材料を再び組わせるのが鍛接です。つまり、鍛接は鉄資源が必ずしも潤沢とは言えなかった日本で、無駄なく材料を使うために生まれた技術だと考えられています。

 

鍛接は日本刀の作刀にも用いられてきた技術です。よい日本刀の条件は、「折れず、曲がらず、よく切れる」と言われます。戦場では切れるよりも前に、「折れず、曲がらず」最後まで使えることの方が優先されたようです。切れ味が鋭いと同時に、衝撃を吸収して折れにくい構造が鍛接によって得られるのです。

 

このような鍛接によって刃物を作る際に、全体の土台を作る鉄を「地金」と呼び、刃先の部分に用いる硬い材料を「刃金」と呼びます。ここから「はがね」という呼び方が生まれたと考えられています・

 

 

まとめ

鉄と鋼は、どちらも重要な金属材料ですが、その特性と用途は大きく異なります。鉄は柔らかく加工しやすい材料であり、構造物や日常用品に広く使用されています。一方、鋼は硬く、耐久性があり、工具や機械部品、刃物などに適しています。

 

日本の伝統的な刃物文化では、鋼の特性を最大限に活かし、鋭い刃を作り出す技術が発展してきました。

 

 

全体の文章の構成はChatGPT先生だけど、ちょっと同じ内容の繰り返しが多かったり、怪しい内容もあったりしたので、大幅に手を入れています。全体の流れを考える参考にはなりました。

トップの画像もChatGPT先生です。現代の西洋の鍛冶場を和風に表現した感じがどうにも否めない。排気フードやアンヴィル、壁に掛けた道具類とか。あと床が畳っぽく見えるのも何とも。

*1:脱線するし、そこまで詳しくないので脚注で書きますけど、超新星爆発とかで惑星が生まれたとき、元素が核融合して大きくなっていく場合と、核分裂で小さくなっていく場合に、一番安定する元素の1つが鉄で、地球では最も多い元素の1つらしいです。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%85%E6%96%B0%E6%98%9F%E5%85%83%E7%B4%A0%E5%90%88%E6%88%90

まあ、我々の血が赤いのは(酸化鉄を呼吸に利用するのは)地球上に鉄(と酸素)が多いから

*2:これも確証がない余談なので脚注で書きますが、ずっと熱処理しないから「生野菜」や「生魚」と同じ意味で「ナマ」なのだと思っていましたが、ひょっとすると日本語の語源的には「なまり」(訛、鉛)あるいは「なまる」(鈍、訛)のように柔らかくて鋭い刃物にならない材料を元々、「ナマ」と呼んでいて、逆にそこから「熱処理しない」の意味で「生」が生まれたのかもしれません。いや「ググる」みたいに名詞、形容詞から動詞が生まれるパターンもあると思いますが

*3:つまり、現在の地球温暖化の視点で言えば、製鉄は大量の二酸化炭素を排出します。現在は水素により還元させ水を排出する技術も研究されています

*4:あるいは炭素量の異なる2種類の鋼。先ほど鋼の炭素含有量を0.4~1.4%と書きましたが、0.02~2.0%など、どこからどこまでを鋼と呼ぶかは人によって異なります