どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse³」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。
先日放送されたテレビ番組で、三条市への移住希望者が全国1位って視点で、三条市への移住が取り上げられたけど、実際の三条はそんな楽観視できる状況じゃないよ、という話の続きです。
実際は、こっちの話を先に書き始めてましたが、着地点が見つからず放置してたら、その番組があったので、着地点が見つからないまま、更新するものです。
なので、いけのの中に、今後の方針、対応策、みたいなものはぼんやりありますが、今回はそこには触れません。暗澹たる未来を示唆して終わります。
こういう話をすると、暗い話をするな、もっと前向きな話をしようぜ、とか、対策とセットで言え、とか言う人がいるんですよ。
まあ、でも、いけのは理工学部出身なんでね。本質的な課題の把握から目を背けて正しい解決策とかあり得ない、と思うので。
そういうのが嫌いな人に無理して読めとか言いませんよ。小学校の課題図書じゃねーんだし。個人が趣味(?)でやってるブログだし。
暗い現実と向き合うことに耐えられる精神力をお持ちの人のみ、どうぞ。
本題の前に、前回のテレビの話はこちら。
いやー、トラウデン直美、いいよねー、てことで、本題に入ります。
- 1 新成人の数が減る、今後20年減り続ける
- 2 地方の若者はもっと減る
- 3 高校を卒業すると出て行って帰ってこない(20世紀)
- 4 そもそも生まれてないのに帰ってこない(21世紀)
- 5 そもそも生む人がいない(今後)
1 新成人の数が減る、今後20年減り続ける
ちょいと話は遡って1月前半の成人の日のあたりに毎年、政府が「今年の新成人」の人数を発表するんですよ。2021年の1年間で20歳になった人は約120万人。
それに対して、まだ2021年の8月までの速報値しか出てないですけど、2020年9月~21年8月の1年間に生まれた子供の数は約80万人。
移民とかの積極的な受け入れでもない限り、突然15歳で人口が増えたりはしないので*1、20年後に成人を迎える人*2は、2/3に減ってしまう、という話がネットでも出てました。
これから20年で新成人が2/3に減る。
ところで、上の新成人数のリンク先を見ていただきたいんですけど、1977年生まれの我々が成人した90年代後半は、毎年180万人くらい成人がいたんですよね。
つまり25年前から比べると、既に新成人は2/3に減っている。
2 地方の若者はもっと減る
で、今日の本題は、もう一歩踏み込んで、地方はもっとヤベぇよ、という話。
地方自治体で真面目に人口問題を考えている職員なら当たり前の話なんですけど、意外と市民に伝わってない。そして、多分、市役所とかでもあんまりちゃんと考えている職員が多くはない。
で、三条市が特別悪いわけではなくて、都道府県庁所在地とか、首都圏・近畿・東海の三大都市圏を別にすれば、全国の地方都市はだいたいどこもヤベぇんですよ。
むしろ、移住希望で全国1位になる三条市はまだマシな方かもしれない。
とりあえず、他の街に興味はないので、三条市だけ*3を見て行きます。
過去の国勢調査から集めた、三条市の人口を5歳ずつに区切ってったうち、25-29歳人口の1955年から2020年までの推移。
若いヤツ全然いねー! 2005年調査(我々の世代)までギリ6千人(1学年1,200人)弱いたのが最新2020年では、4千人(1学年800人)以下! 2/3!
元々、この、若い人がいないって話を説明しようと思ったキッカケは、うちの店に来る企業経営者や求人担当、あるいは単に現場の管理クラスの社員さんたちから、若い人がいない、求人かけても人が集まらないって話だったんです。
集まる訳ないですよね、この15年で若い人の数が2/3に減っているので。
つまり、昔だったら求人かけて2人の枠に6人希望者が来て優秀な2人を採用し、4人を落とせばよかった、という職場があったとする。
今、その職場で同じように募集しても、人口だけを基準に考えても、4人しか来ないってことです。
その仕事への魅力とか、若い人の価値観とかは抜きにしてもね。
あるいは、2人の枠に3人しか来なかった職場なら今、2人ジャストしか来ない。
昔だったら落としてたような人でも、求人に応募してくれただけで、ありがたいと思って採用して、そいつでも結果を出せる仕事の仕組みを考えるのか。
あるいは、量より質を重視して、ムリだなって人にはお引き取りいただき、少ない人数でも回る仕事の仕組みを考えるのか。
3 高校を卒業すると出て行って帰ってこない(20世紀)
どうしてこんなことになっているのか。
詳しく見る前に、改めて国勢調査について。
毎回皆さん回答しててもイマイチ理解してないかもですが、5年に1回、西暦末尾0と5の年の10月1日を基準日として、全国民を対象に実施している調査です。
5年に1回の調査なのと、基準日が10月1日で、日本人が年齢を考えるときの西暦(1月1日基準)や学年(4月2日基準)とズレるので、その感覚をナラすために5歳階級で見ています。
上の図で言うと、2020年なら、2020年10月1日時点で25歳から29歳の人を1つの集団として見ています。1990年10月~1995年9月生まれの人たちですね。
で、成人式の話から20-24歳じゃなくて、なんで上の図では25-29歳を見ているか、と言うと三条の場合、高校卒業、大学卒業時点で引っ越す人が多くて(あるいは大学中に引っ越しているけど、三条市民として回答する)、15-19歳と20-24歳は動きが激しいので、少し時間が経って、落ち着いたところで見ています。
で、次に、この、同時期に生まれた5歳集団がどのように増減してきたかを見ます。
まずは、上の図で言う真ん中あたりの世代、1946年以降に生まれた人たちを5歳ごとのグループに分けて年齢とともに人口がどのように推移してきたか。
一番上の緑が「団塊世代」、1955年調査時で5-9歳の人たち、1945年10月~1950年9月生まれの人たちです。図では便宜上、46-50年としています。すみません。
5年に1回の国勢調査のたびに5歳ずつ年齢を重ねた人たちの数が、どのように変化していくか。
高卒で集団就職で東京に出て行った世代なので、15-19歳(65年調査)と20-24歳(70年調査)で大きく人口を減らして、以後、9千人前後で推移しています。
その後の世代でも、20歳前後で流出する傾向は変わりません。
25-29歳でやや人口が回復する傾向が見られますが、この回復の理由が、三条市出身者が進学や修業期間を経て地元に帰ってきているのか、就職や結婚などで市外出身者が転入してきているかは、この調査では見ることができません。
あくまで当時、三条市に住んでいる対象年代の人の数を見ているだけなので。
4 そもそも生まれてないのに帰ってこない(21世紀)
で、次に同じグラフの最近の傾向。
見て取れる傾向は3点ありますよね。
まず、上のグラフでは各世代8千人以上いた0-4歳人口(つまり5年に1回の調査の間に新しく生まれている人たち)が年々下がっている。
そして、引き続き20歳前後で外に出て行く。
さらに、20代後半で入って来る割合が下がり気味。
ただ、最後の20代後半での回帰傾向は、大学進学率の上昇、就職年齢の高齢化に伴って動くポイントが後ろにズレているのかもしれません。1981-85年生まれでは30-34歳で少し増えているので。
5 そもそも生む人がいない(今後)
少子高齢化の問題を語るとき、女性1人あたりの出生数が言及されがちです。
ただし、一部の識者はさらに踏み込んで発言していますが、1人の女性が2人の子どもを産むとしても、100人の母親がいるのと、60人しかいないのとでは、生まれてくる子どもの数はもちろん減ってしまう。
ぎりぎり団塊Jr.最後の我々も、この2020年国勢調査では40代になってしまって、親としては、もう期待できない。
上で見たとおり、2010年調査以降、結婚適齢期の20代後半が激減している。これからは、親の世代がもう減りはじめている。
2020年調査で25-29歳(90年10月~95年9月生まれ)の人たちは、生まれた95年時点で5.3千人しかいなかったのに今、3割くらい減って、3.7千人しかいないんですよね。
この人たちが全員結婚して夫婦2人で2人子供を産んでも生まれてくる子供は3.7千人です。
実際には、今、日本人女性が生涯で子供を産む人数の平均は1.4人くらいなので*4、次の世代はおそらく2.6千人くらいしか生まれてこない。
で、その2.6千人の子供たちが20年後に3割外に出て行くと、1.8千人。で、残った人たちが産む子どもの数が…。
これが今、三条市(に限らず、全国の地方都市)が抱えている人口構造の課題です。
次回(多分)は、では、どうやったら少しでも人が減るのを食い止められるのか、と、現実問題として人が減っていく中でどう戦っていくかを考えます(多分)。
あー、その前に、もう少し具体的に、どのタイミングで、なぜ人が出て行くのか、とかも詳しく考察した方がいいんでしょうかねえ…。原因をより正確につかんだ方が対策の説得力、ありますか…?