Beerhouse³ 営業日誌

ものづくりの街、新潟県三条市でビール屋やってます

おいしい酒、おもしい酒

どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse³」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。

 

先日、とある料理研究家さんが飲み会のおごる、おごらないで炎上しておられました。個人的には、あの料理研究家さんの料理に対する姿勢やアイディアは大変、尊敬しているし、何より連日レシピ動画を投稿し続ける取り組み方や、商品開発等のビジネス展開も称賛に値すると思います。

 

ただ、彼の酒の飲み方は好きじゃないんですよね。ある種、キャラクターづくり、芸風としてカメラの前で過剰にやってるところもあるのでしょうけど。酒に飲まれるような飲み方は好きじゃない。

 

一方で、酒の場に、(若くてキレイな)女性を連れてきた方が楽しいですよね、いないと楽しくないですよね、みたいな男も好きじゃない。ついでに、(自分は若くてキレイな女性なので)この場に私がいて楽しいでしょ、みたいな女も好きじゃない。

 

酒場の経営者としてと言うより、普通に自分が酒を飲むときに、こういう連中がいたら、なるべく早めに河岸を変えたい。

 

目の前の! 酒に! もっと! 向き合いなよ!

 

ついでに、ちょうどこの炎上事件のころ、とある有名起業家が飲み会が嫌いな人のための飲み方みたいなのをSNSにポストしてたけど、そこで記されていたような飲み会が苦手だけど断れなくてうっかり出てきたようなヤツも邪魔くさい。

無理して出なきゃいいし、間違った場所に出たと思ったら適当に切り上げて帰ればいいだけの話で。

 

自分の! 飲みたいものを! 飲みなよ!

 


人類の長い歴史の中で、酒はしばしば災厄を起こしてきて、禁止されかかっても多くの文明で存続してきた、ということは文化的、社会的、生物学的に何らか人類にとって価値や意味があると思うんですよね、酒っていうのは。

 

もちろん酒の意味には、社交的な面もあるだろうし、単に酩酊感にひたるのもあるんだとは思うんですけど、個人的には、アルコール飲料っていうのは、味が一番面白いんじゃないかな、と思うんです。

 

 

そもそも我々、ホモ・サピエンスがなぜ酒を飲めるようになったか、つまり、アルコールを代謝できるようになったか。

 

どうやら、人類学とか進化生物学の研究では、我々の先祖にとって、ジャングルの中の完熟した果物は、消化しやすい糖分の塊、つまり最高のごちそうで、これを食べれたほうが生存競争に有利なので、アルコールが飲めるようになったらしいんですよ。完熟した果物は木の上についたままでも酵母が発酵を始めて自然に酒を造ることがあるので。あるいは地面に落ちて腐る前に。

 

酵母と人類による糖分の争奪戦。アルコールを作ることで敵を殺そうとする酵母と、アルコールを分解できることで酵母ごと糖分を摂取する人類。

 

 

で、味だけじゃなくて、この完熟した果物の香り、目に見えないほど遠くからでも、「お、あっちにおいしい物がありそうだぞ」とか、目で見ても熟れ具合が分からない果物を「お、こっちは食べやすそうだぞ」とか感じ取るセンサーとしての「嗅覚」にスイッチを入れる香りの成分も、アルコールとは相性がいいんですよね、そもそも。どちらも糖が変化したものなので。

 

人類がおいしそうな、いい香りだと感じる成分とアルコールは分子構造が似ていて非常に溶け込みやすい。

 

 

もちろん、おいしさは生化学的な反応だけじゃなくて文化や個人の体験も大きく影響するので、酒をおいしくないと感じることもあるでしょうし、実際に経済的、技術的要因で、大しておいしくない酒も世の中にはあると思いますけど。

 

 

文化や個人の感情に根差した酒の魅力で言えば、嗜好品として長い歴史の蓄積があり、奥が深い、というのも酒の面白さだと思います。

 

人類の長い歴史の中で求められ続けてきたアルコール飲料の世界は、広くて変化に富んでいる訳ですけども、その中でもクラフトビールは、新しいアイディアと古くからの伝統、そして造り手たちの限りない好奇心という「酒が持つ力」が詰まっている、と思うんですよね。あるいは、いったん、そういう視点から酒を考えてみるのも面白いんじゃないですかね。

 

人類の叡智の結晶としての酒。アイディアの塊としての酒。クラフトビールとは、芸術性と科学が結びついた領域であり、探求と情熱に満ちている、と。仮説として。

 

 

クラフトビールは大量生産ビールに対抗する、という性質上、常識を破りにいきがちなんですよね。出来る限り安価で、出来る限り多くの人に愛される、という大手ビールの宿命に対して、クラフトビールは、単調なもの、標準的なもの、期待されるものに逆らう。

 

いつもと同じアプローチにこだわらず、違いを楽しむ。原材料で遊んでみたり、忘れ去られた遠い過去の醸造技術を掘り下げてみたり、身の回りの世界からインスピレーションを得たりします。変わった果物を入れたり、熟成に木樽を使ったり、古代の発酵方法に戻ったりと、さまざまな醸造方法が試されて、クラフトビールは伝統を守るだけではなく、それを土台に現在も進化し続けています。

 

生化学的な反応としての味だけではなく、文化的な面で言えば、クラフトビールに宿る「冒険」の精神は、人間の好奇心という本質に響くものがあるんじゃないかと思うんです。

 

私たちの祖先が、自然に発酵しはじめた果物を何だかおいしそうと思って食べてみたり、新しい栄養源として穀物を食べてみたりしたように、私たちはクラフトビールを通じて、小さな冒険に出かけられるんじゃないでしょうか。まだ出会ったことのない醸造所やスタイル、限定醸造を楽しみにするだけではなくて、実際に、人気のビールを飲むためだけに遠くまで出かけることもある訳ですけども。

 

もちろん、新奇性だけじゃなくて、慣れ親しんだ定番を改めて飲んでみると、今まで気づかなかった別の要素に気づく、みたいな飲み方もいいですよね。

 

 

おいしい と おもしろい。

 

という感覚を大事にしたいんですよ。少なくとも、うちの店は。

 

で、まあ、新潟県民なので、

 

おいしい と おもしい

 

ですけども。この「おもしい」は「fun」じゃなくて「interesting」ね。「楽しい」というよりは「興味深い」。

 

クラフトビールは、この「おいしい酒とおもしい酒」の理念を完璧に表現していると信じている訳ですね、自分は。ひとつひとつの樽やボトルに、ブルワーさんの好奇心や特別なものを作りたいという思いが込められているんじゃないか、と。そして私たち、飲む側もその興奮と発見を楽しめる。

 

 

他のお店さんの考え方は色々あるとは思うんですが、うちの店は、ムダな飲み方は、あんまりしてほしくないかな、と思うんですよ。ムダという言葉が適切かはともかく。せっかくなら、お酒自体の良さをちゃんと楽しんでほしいし、体にもムリのない飲み方をした方がいいと思いませんか。思わない? そうですか。

 


一応、飲み会が苦手な人についても触れておくと、一緒に酒を飲むって社会的に大事な行為ではありますけど*1、無理に飲まなくていんじゃないですかね、とは思います。他人に強制されて、ではなくて、自分が本当に飲みたいと思ったときに、作った人への敬意を持って飲んでいただけたら、ありがたいです。少なくとも、うちの店ではね。

 

ノンアルコールや低アルコールで魅力的な飲み物も探したいとは思っていますが。

 

 

というわけで、うちの店では、普通の、大手のビールではなく、新しいものや、ちょっと変わったものを探してる人にクラフトビールの深い世界を楽しんでいただけたら、と思います。本当にいろいろな味があって、それぞれの面白さがあるので。一周まわって、そこで大手のビールを久しぶりに飲むのも新しい発見があるものですし。

おいしい酒とおもしい酒。ぜひ、楽しんでみてください。

 

   ※   ※   ※

 

今回は全体的な文章の方針をChatGPT先生と相談しながら書き*2、ヘッダ画像も先生に内容にふさわしい絵を考えていただいた後、Microsoft Bing Image Creator先生(中身はDall-E3)に描いていただきました。

Image Creator先生は出た画像を受けてプロンプトを修正して再描画とか、縦横比を横長にするとかが出来ないんですよね。ChatGPT版Dall-E3、はよ来て。下書きを書いたまま熟成かけてる間に来たので、次回以降はそっちで生成するかも。横長画像も作れる。

 

 

*1:「シンポジウム」の語源はギリシア語で「共に飲む」、プラトンの「饗宴」の原題

*2:文体の修正もChatGPT先生に投げたけど、一部、先生の英語直訳調が残っているかも