どうも。新潟県三条市の中心部、「本寺小路」でクラフトビールを中心とした飲食店「Beerhouse³」を、とりあえず何とか営業しております店主いけのです。
アメリカ東海岸のクラフトブルワリー、ヴェイル(The Veil Brewing)について調べていたら、ヘッドブルワーのマット・ターピーさんが「おいおいハードコア・バンドの人かよ」というゴツいタトゥーを両腕にガッツリ入れてたのだけど、ハードコアじゃなくて、メタルコアの人でした、という記事です。
以下、詳細。
ヴェイル・ブルーイング
ヴェイルは、アメリカ東海岸ヴァージニア州の州都リッチモンドに拠点を置くブルワリ。創業は2016年4月と、2021年現在、やっと5周年のまだまだ若い醸造所です。
ヘッドブルワーで共同創業者、共同所有者のマット・ターピーさんは、2010年ころから醸造業界に入り、アメリカ東海岸のいくつかの醸造所で修業を積んできたとか。
そのうちの1つが、東海岸の濁った(ヘイジー)IPAのオリジネイターとして知られる、アルケミスト・ブルーイング。さらにはベルギーに渡って伝統的な野生酵母の酸っぱいビール、ランビックで知られるカンティヨンでも修業。
と言うわけで、ヴェイルは主に、濁ったとろとろのビールと、酸っぱいビール、そして、そのハイブリッドとも言えるスムージーのようなビールで評価を集めています。冒頭の写真のビールも、どっちもそんな感じ。
ヴェイルとマット・ターピーさんを紹介する記事はこの辺とか。英語ですけど。
腕のタトゥー、すげー。
メタルコア
で、そのマット・ターピーさん、ビールの業界に入る前は、いくつかメタルコアのバンドをやってたらしい。
2000年くらいからアメリカ北東部を中心にハードコアをやってた連中が、特にヨーロッパの抒情的なヘヴィメタルの影響を取り入れて勃興したジャンル。メタルとハードコアでメタルコア。
北米では、90年代に入ってからメタルらしいメタルが完全にアンダーグラウンドに埋没していた中、New Wave of American Heavy Metal*1とも呼ばれて、メタル復活が期待されていた時代。
代表的なバンドは、勃興期を牽引したバンドだと、マサチューセッツのKillswitch EngageやShadows Fallあたりで、あるいはヴァージニアだとLamb of Godや、隣のワシントンDCのDarkest Hourなどが有名。
Winter Solstice
で、マット・ターピーさんが在籍してたバンドの1つが「冬至」を意味する、Winter Solstice(ウィンター・ソルスティス)。
2005年には、Metallicaを輩出したことで知られるメタル専門レーベル、メタルブレイドからアルバム「Fall of Rome」をリリース。
メタルブレイドの資料によれば、Winter Solsticeが当時、一緒に回ってたバンドは、Underoath, As I Lay Dying, Norma Jean, The Black Dahlia Murder, Bleeding Through, Bury Your Dead, Death By Stereo, It Dies Todayといったところ。絶頂期って感じのラインナップ。
さらに、このアルバムのリリース後には、As I Lay Dying、All That Remainsと全米ツアーしてたらしい。05年ころのAILDとATRと言えば、いよいよメタルコアが盛り上がってきて、また新しいバンドが出てジャンルとしてすっかり定着したなぁ、という時代の代表格ですからねぇ。
レーベルメイトでもある、As I Lay Dyingの05年作「Shadows Are Security」から。
All That Remainsの翌06年リリース「The Fall of Ideals」から。
両曲とも、00年代中期のメタルコアを代表する名曲です。これを聴いてピンとこない人は、メタルコア、少なくともこの時代のメタルコアを聴くのはちょっと向いてないかも*2。
で、Winter Solstice。残念ながら、このアルバムを最後に解散してしまったせいもあるのか、YouTubeに公式音源は見当たらず…。
とはいえ、AmazonとSpotifyにはありました! すごいぞ、インターネット!
…うーん…まあ、好みの問題もありますけども…思ったよりハードコア寄りでミドルテンポの曲が多いし、ギター/ヴォーカルにもうちょいヒネりがほしいですかね…。ギターはまだ時々「おっ」っていうリフも出てくるけども…。
自分はあくまで、ヨーロッパの抒情メタルを元々聴いていて、それに対するアメリカからのアンサーとしてのメタルコアを聴いてた人なので、ハードコア寄りすぎるとちょっと個人的には…。
As I Lay Dying、All That Remainsに並ぶには少し厳しかったかもしれない…。
…というか、05年当時、一応、日本盤もメタルブレイド・ジャパンからリリースされてたみたいなので、自分はもう東京にはいなかったので店頭で音源発掘できてた時代ではないですけど、それなりに熱心に聴いてた身として、雑誌やネットである程度評価されてればリアルタイムで存在を認識していたはずなので…。
バンドはこの1枚のアルバムだけを残して翌06年に解散してしまったようですが、マット・ターピーさんはこの後、We Were Gentlemenという別バンドに参加。
こちらはヨーロッパ拠点ながら北米のバンドも積極的に発掘するメタル・レーベル、センチュリーメディアから09年にアルバムをリリース…したものの、こちらも解散し、音楽業界を去ったようです。
音楽で食べていくのって才能だけじゃなく、タイミングとか運とかもあるので大変ですよねぇ。
とはいえ、ヴェイルのビールはウマいので、ビール業界に来てくれてありがとうございます! という感じです!
まあ、しかし、この頃のAs I Lay DyingとAll That Remainsはマジでいいバンド。